バイオマス発酵で代替シーフードを開発する米AQUA Cultured Foodsが、代替シーフードの生産を最適化するため、米バイオテック企業のギンコバイオワークスと提携したことを発表した。
Green queenの報道によると、詳細な時期は未定だが、AQUA Cultured Foodsはまもなくアメリカ、シカゴのミシュラン星付きレストランで最初の製品を提供する。同社はマグロ、ホタテ、エビを開発しており、最初の製品はマグロとホタテになる予定だ。
バイオマス発酵由来のシーフード
AQUA Cultured Foodsは、バイオマス発酵でシーフード開発に取り組む企業がほぼなかった2021年に設立された。
昨年9月には、ギンコからスピンオフされたMotif Foodworksで、オレオゲルを使用した霜降り代替肉の特許の発明者の1人であるStefan Baier氏がチームに加わった。
AQUA Cultured Foodsは2022年2月にバイオマス発酵によるイカを発表し、最初の製品がイカになるとしていたが、今回の発表により、マグロ・ホタテから市場投入することが明らかになった。
プロセスでは、伝統的な発酵とバイオマス発酵を組み合わせて、乱獲・環境破壊・有毒物質などの問題を伴わない代替シーフードを開発している。微生物を「工場」として特定成分を生成する精密発酵技術は使用していない。
独自プロセスにより生成されるマグロ、ホタテ、エビは6週間、新鮮で柔らかな状態を保持できるという。マグロ、ホタテは刺身のように食べたり、ポケ丼にしたりできる。
「微生物コンソーシアム」の最適化でも協力
ギンコは、ハイスループットの次世代シーケンスと高度な分析サービスを活用して、AQUA Cultured Foodsの菌株を最適化・調整し、プロセスのスケールアップを支援する。
AQUA Cultured Foodsは微生物を活用してホールカットやミンチタイプの代替シーフードを製造するだけでなく、食品業界に幅広くユニークな風味・食感を導入したいと考えており、このための「微生物コンソーシアム」の最適化でもギンコと協力する予定だ。
同社は昨年1月、ホールカットシーフード製品の生産拡大のため、シカゴで新しい生産施設の建設開始を発表した。昨年4月には販売に先立ち、消費者向けの試食会を開催。
同月には代替タンパク質の投資に特化したベンチャーキャピタルStray Dog Capitalが主導するシードラウンドで550万ドル(約8億3000万円)を調達した。出資者には韓国のCJ第一製糖も含まれており、これまでの調達総額は780万ドル(約11億円)となる。
増えるギンコバイオワークスとの提携
代替タンパク質業界においてここ数ヵ月、ギンコと提携するスタートアップ企業が目立つ。
ギンコは食品、農業、医薬品、工業用および特殊化学品に至るまで、多様な市場にわたる組織の課題を解決する柔軟なエンドツーエンドのサービスを提供している。
AQUA Cultured Foodsのほかに、これまでに下記企業がギンコと提携している。この中には乳製品製造で発生する副産物の有効利用を目指す酪農協同組合Foremost Farmsもいるなど、既存業界との興味深い提携事例もある。
- Vivici(精密発酵でホエイを開発)
- Phytolon(精密発酵で着色料を開発)
- Nosh Biofoods(赤身肉のようなマイコプロテインを開発)
- QL AG(精密発酵で乳タンパク質を開発)
- Imagindairy(精密発酵でホエイを開発)
- Evo Foods(アニマルフリーな卵白タンパク質を開発)
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Foremost Farms(乳製品製造の副産物をアップサイクルして新技術を開発)
成果を報告する企業もあり、イスラエルのPhytolonは今年1月、2つの菌株から天然色素を生成する最初のマイルストーンを達成したことを発表している。
参考記事
AQUA Cultured Foods Partners with Ginkgo Bioworks to Optimize Alt-Seafood Production
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アイキャッチ画像の出典:Aqua Cultured Foods