代替プロテイン

【世界初】シンガポールの小売店で培養肉の購入が可能に|米GOOD MeatがHuber’s Butcheryで新製品の販売を開始

 

世界で初めて培養肉を発売した米GOOD Meat(イート・ジャストの子会社)が、シンガポールの小売店で培養肉を販売することを発表した

GOOD MeatはHuber’s Butcheryと提携し、製品に3%の培養肉を使用した新製品GOOD Meat 3」を5月16日より正式に発売、年内を通じてHuber’s Butcheryの冷凍コーナーで販売する。

GOOD Meatは今年3月、シンガポールでの培養肉の製造・販売を一時停止していることが報じられた。同社はシンガポールの現地メディアに対し、「まもなく」培養肉を提供すると当時述べていた。その言葉通り、シンガポールで再び培養肉の販売を開始した。

▼2024年7月に店舗を訪問&培養肉を実食

 

GOOD Meatがシンガポールの小売店で培養肉の販売を開始

Huber’s Butchery 2022年12月 Foovo(佐藤)撮影

今回の発表が画期的な点は、培養肉が小売店の冷凍コーナーで販売されたことだ。

シンガポールの一般スーパーではインポッシブル・フーズQuornなどの日本ではまだ身近でない代替肉製品が冷凍コーナーに陳列されているHuber’s Butcheryはシンガポール郊外にある1店舗とはいえ、培養肉が冷凍コーナーに導入されたのは大きな前進だ。

新製品「GOOD Meat 3」 出典:GOOD Meat

GOOD Meatの親会社イート・ジャストの共同創業者兼CEOのジョシュ・テトリック氏は、「当社にとっても、培養肉業界にとっても、GOOD Meat 3を試してみたいシンガポールの人にとっても、今日は歴史的な日です」とコメント。

「今日まで一般の人々が培養肉を小売店で購入することはできませんでしたが、今それが可能になりました。今年はこれまでのどの年よりも多くの培養鶏肉を販売する予定です。同時に、培養肉を大量生産できることを証明するにはやるべきことがまだまだたくさんありますので、引き続きその目標に注力していきます」と述べている。

ハイブリッド戦略の強化で培養肉を食卓に

新製品「GOOD Meat 3」 出典:GOOD Meat

プレスリリースによると「GOOD Meat 3」は、シンガポールの培養肉に対する消費者の強い需要に応え、自宅で培養肉を気軽に試す機会を作るために開発された。これまでのGOOD Meat製品よりも少ない割合で培養肉を使用することは、主要課題の1つである培養肉の生産コストの削減にも役立つ。

GFIによると、これまでは製品の約70%を培養肉が占めていた

植物タンパク質をわずかでも培養肉で置き換えると、消費者が求める肉らしい風味を再現できることは以前より言われてきたことだとGFI言及している

昨年シンガポールで開催されたオランダ企業Meatableの試食会で提供された培養ソーセージも、3分の1が培養肉、3分の2が植物成分だったが、試食した地元メディア記者は、違いを見分けるのは難しいと述べていたという

出典:GOOD Meat

「GOOD Meat 3」はHuber’s Butcheryの冷凍コーナーで120g、7.20シンガポールドル(約820円)で販売される。

参考に、冷凍製品を販売するシンガポールのオンラインストアでは、鶏ささみ肉400gが9シンガポールドル(約1030円)で販売されており、「GOOD Meat 3」はやや割高ともいえるが、消費者が気軽に購入できる製品として冷凍コーナーに陳列された意義は大きい。

培養肉初販売からこれまでを振り返る

培養肉の地域別・認可状況

現時点で、培養肉の販売が認められている地域はシンガポールアメリカイスラエルとなる。

Foovo作成 赤い点線枠は承認待ちの企業(一部)、青い点線枠は手続きを開始している企業

 

培養肉初販売からこれまでの流れ

ここで培養肉が販売されてから、認可・上市・法規制に関する歴史を振り返ってみよう。

  • 2020年12月GOOD Meatシンガポールで販売認可を取得、会員制レストラン1880で培養鶏肉を販売シンガポール初販売
  • 2021年4月GOOD Meatが世界初となる培養肉のデリバリーサービスを開始
  • 2021年9月Esco AsterがCDMOとして培養肉の製造承認をシンガポールで取得
  • 2021年12月GOOD Meatが新しい培養鶏肉製品の販売許可をシンガポールで取得、JWマリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチで提供。
  • 2022年3月GOOD Meatが人気屋台Loo’s Hainanese Curry Riceと提携し、4シンガポールドル(当時約360円)で提供
  • 2023年1月GOOD MeatHuber’s Butchery提供開始
  •        GOOD Meatが無血清培地を使用する認可をシンガポールで取得
  • 2023年6月GOOD MeatUPSIDE Foodsがアメリカで最終承認を取得
  • 2023年7月Upside FoodsGOOD Meatアメリカで培養肉を発売アメリカ初販売
  • 2024年1月アレフ・ファームズがイスラエルで培養牛肉の認可を取得
  • 2024年2月-韓国が培養肉申請の受付を開始
  • 2024年3月-シンガポールで培養肉の製造販売一時停止が報じられる
  • 2024年4月Vowがシンガポールで培養肉の販売認可を取得、レストランMORIで発売
  • 2024年5月VowがレストランTippling Club限定販売
  •                    韓国が培養肉特区を設置

 

培養肉をシンガポールで試す難しさは、Foovo自身が体験として何度か痛感したことである。Huber’s Butcheryは昨年、毎週木曜に培養鶏肉を使用した料理を限定提供していたが、予約はすぐに埋まり、シンガポール訪問に合わせて予約を取ることはできなかった。

昨年の1年間、培養肉が提供されていたHuber’s Bistro 2022年12月Foovo(佐藤)撮影

プレスリリースでは年内を通じて販売予定とあるが、GFIによると、新製品もこれまでと同様、数量限定での販売とあり、製造状況によっては一時的に提供されないことも考えられる。

Huber’s Butchery 2022年12月Foovo(佐藤)撮影

Foovoが訪問した印象では、Huber’s ButcheryはFairpriceなどのスーパーよりも高級志向の精肉店・小売店であり、GOOD Meatが最初に導入する小売店として価格面・購買層から理想的といえる。

Huber’s Butcheryは郊外の静かなエリアにあり、培養肉製品がどれだけの消費者に届くか、消費者がどのような感想を持つか、そして、ここからFairpriceCS Freshなど他のスーパーへの導入が進むかにも注目したい。

 

参考記事

GOOD Meat Begins the World’s First Retail Sales of Cultivated Chicken

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:GOOD Meat

 

関連記事

  1. 魚の培養脂肪を開発するインパクファット|日本人研究者がシンガポー…
  2. ドイツ大手小売業者REWE、同社初のビーガン専門スーパーを開設
  3. モサミートが培養肉の工業生産に向けて生産施設を拡大
  4. アメリカが培養肉販売を承認|GOOD Meat、UPSIDE F…
  5. アフリカ発の培養肉企業Mzansi Meat、2022年後半の市…
  6. オレオゲルで植物肉用の代替脂肪を開発するParagon Pure…
  7. アイスランドORF Geneticsが大麦由来の低コスト成長因子…
  8. アニマルフリーなチーズを作るChange Foodsが約2.3憶…

おすすめ記事

DSM・フォンテラが設立した精密発酵企業Vivici、資金調達を経てアニマルフリー乳タンパク質の開発を加速

精密発酵でアニマルフリーな乳タンパク質を開発するオランダ企業Viviciは今月、…

酵母由来の代替パーム油で2023年上市を目指す英Clean Food Group

イギリスを拠点とするClean Food Groupは、パーム油に代わる酵母由来…

精密発酵で代替パーム油を開発するC16 Biosciencesが約5.1億円を調達、食品事業を強化

精密発酵で代替パーム油を開発する米C16 Biosciencesは今月、食品分野…

米New Culture、精密発酵カゼイン使用量を50%以上削減しながらレストラン品質のモッツァレラを実現

精密発酵でカゼインを開発する米New Cultureは先月、新たなコスト削減の成…

AQUA Cultured Foods、シカゴの高級レストランで代替シーフードの提供を開始|創業者インタビュー

持続可能な代替シーフードを開発する米AQUA Cultured Foodsの代替…

デンマークのMATR Foods、欧州投資銀行から約31億円の融資で菌類由来代替肉の工場建設へ

菌糸体を活用した代替肉を開発するデンマークのMATR Foodsは今月、欧州投資…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(03/28 14:53時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(03/29 00:40時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(03/28 04:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(03/28 20:51時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(03/28 13:00時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(03/28 23:53時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP