アップサイクル

ソーラーフーズがフィンランドのNasdaq First North Growth Marketに上場

 

フィンランドのソーラーフーズ(Solar Foods)は今月10日、フィンランドのNasdaq First North Growth Marketに上場したと発表した(ティッカーシンボル:SFOODS)。同社の上場は直接上場(ダイレクトリスティング)であり、新規株式発行や売却は行われていないためIPOではない。

ソーラーフーズの主力製品は、二酸化炭素、電気、微生物を利用して生産される代替タンパク質「ソレイン」。

同社は今月、アメリカでGRAS自己認証を取得し、年内にはアメリカ市場でソレイン販売を目指している。

同社のCEO(最高経営責任者)であるPasi Vainikka氏は、「上場によって当社は、生産の世界規模への拡大と商業化に向け、事業を次のステージに進めることが可能になります」と述べた。

また同氏は、年間160トンのソレイン生産を目指す「Factory 01」に加え、50~100倍の生産能力を持つ次の生産施設「Factory 02」の計画も進行中であることに言及。この新たな施設により、十分な収益を確保できる規模での生産が実現するという。

ソーラーフーズは事業を世界規模に成長させるため、今回の上場を決めた。同社の今後の戦略には、生産技術のスケールアップ、工場プロジェクトの立ち上げ、新しい「生産生物」や製品の市場投入が含まれている。また、技術開発を加速させるための戦略的買収にも言及している。

さらに、既存の微生物株と開発中の新しい微生物株を使用して、新たな食品原料の世界市場に向けた生産を目指している。加えて、原料供給だけでなく、食品業界向けに水素発酵技術や微生物のライセンス供与も検討している。

「Factory 03」の計画も

出典:Solar Foods

今月フィンランドで開催された会社説明会においてVainikka氏は、「Factory 02」の建設には1億5,000万~4億2,000万ユーロ(約234億円~約655億円)が必要であり、早ければ2028年に稼働開始予定だと説明した。さらに「Factory 03」の建設計画もあることを発表した

長期的には、2035年までに世界中に数十カ所のソレイン工場を設置し、一部はソーラーフーズが建設・運営するが、大半はライセンス供与による運営を想定している

出典:Solar Foods

ソレインは、空気中に無尽蔵に存在する二酸化炭素と、水の電気分解で生成された水素、そして水素細菌と呼ばれる微生物を使用して生成されるタンパク質。この技術により、ソーラーフーズは天候や気候条件に左右されないタンパク質を生産し、従来の農業の制約から開放された新たな生産方式を目指している。

ソレインは広義では単細胞タンパク質(SCP:Single Cell Protein)に分類される。SCPとは、藻類、酵母、真菌、細菌などの微生物によって生成されるバイオマスをいう。原料を砂糖に依存する酵母などから作られるSCPに対し、ソレインは水素と二酸化炭素を利用して水素細菌から作られる点が特徴となる。

ソーラーフーズは2022年後半にシンガポールでソレインの販売認可を取得し、ソレイン使用のジェラートチョコレート月餅中華料理などの限定販売を行ってきた。EU、イギリスにおけるソレインの新規食品申請も完了している。さらに、大手食品メーカー・バイオテック企業との戦略的なローンチや、提携契約の準備も進めていることを今回発表した。

 

参考記事

Solar Foods has listed its shares on Nasdaq First North Growth Market Finland

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Solar Foods

 

関連記事

  1. Oshiのホールカットの植物サーモン、ニューヨークで発売
  2. 子どもが培養肉を知るための絵本のクラファンがスタート
  3. デンマーク議会、炭素税・植物性食品・森林拡大を推進する協定に合意…
  4. アレフ・ファームズが培養ステーキ肉「Petit Steak」を発…
  5. 細胞シート工学で培養肉を開発するEvolved Meatsが約2…
  6. ビヨンドミートが欧州での小売展開を拡大
  7. オイシックス・ラ・大地、サステナブル・シーフード発表会・試食会を…
  8. CMS Japan初開催|細胞農業スタートアップが語る“いま”と…

おすすめ記事

動物肉と同等価格の植物肉が生産可能な自動化技術をシアトルの企業が開発

シアトルに拠点を置く植物肉のスタートアップ企業Rebellyous Foodsは…

細胞培養ソーセージを開発するNew Age Meatsが約28億円を調達、実証プラント建設へ

培養ソーセージを開発するNew Age Meatsが9月にシリーズAで2500万…

Change Foodsが約13億円を調達、精密発酵の市場投入を加速するパートナーシップを締結

精密発酵によりチーズを開発するChange Foodsは、シードラウンドで追加の…

米Atlantic Fish Co、世界初の培養ブラックシーバスを発表

アメリカの培養シーフード企業Atlantic Fish Coは今月、世界で初めて…

キッチンOSのサイドシェフ|買出しレシピサービスでウォルマートと連携

キッチンOSの主力スタートアップサイドシェフ(SideChef)とウォルマートと…

米ケネディ長官、GRAS自己認証の廃止検討を指示|GRAS自己認証の廃止がもたらす変化を考える

ロバート・ケネディ・ジュニア厚生長官(出典:米保健福祉省)2025年3月13日更新精密発…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(03/28 14:53時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(03/29 00:40時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(03/28 04:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(03/28 20:51時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(03/28 13:00時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(03/28 23:53時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP