2025年4月9日更新
オーストラリアの培養肉スタートアップVowが申請した培養ウズラについて、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は2025年3月26日に申請を承認した。
承認文書:Approval report – Application A1269 Cultured quail as a novel food
大臣会合で再審査が要求されなければ、法的に販売が可能となる見通しとなる。
オーストラリア・ニュージーランドで培養肉が承認されるのはこれが初。精密発酵も含めた細胞農業全体では、インポッシブル・フーズの2020年12月の承認に続く快挙となる。
当局による培養肉承認は、オーストラリアの培養肉企業Magic Valleyにとっても前向きなニュースとなる。同社は先日、オーストラリア政府から助成金を獲得した。
Vowはこれまでに、世界初の培養ウズラ肉製品「Forged」を発表し、2024年4月にシンガポール、2024年11月に香港で販売認可を取得し、レストランで提供してきた。今回の承認により、オーストラリア・ニュージーランド市場での市場投入が現実味を帯びてきた。
オーストラリア・ニュージーランド当局が培養ウズラを承認

出典:Vow
VowがFSANZに申請書を提出したのは2023年1月下旬。
FSANZは2023年12月、Vowの胚性線維芽細胞を使用した培養ウズラが食べても安全であるとの結論に達した。
「Call for submissions – Application A1269」の中で、「申請書に記載されたレベルの栄養素を含む、収穫された細胞の消費による栄養学的な安全性の懸念は確認されなかった」と記載され、Vowの培養ウズラは消費する上で安全性の懸念がないことが示された。
その後、2回のパブリックコメント(意見募集)を実施。2024年2月の第1回意見募集では計41件の提出があり、その後の評価を経て、2024年11月〜2025年1月に第2回意見募集が実施され、22件の意見が寄せられた。
FSANZによる承認は、2025年4月7日付で食品閣僚会議(Food Ministers’ Meeting/大臣会合)に通知された。この会議が再審査を要求しない限り、正式に法的効力を持つ見通しとなる。
FSANZは当初、2024年2月下旬に承認、2024年3月上旬に大臣会合へ通知、2024年5月中旬に最終承認というスケジュールを公開していた(下記・Administrative Assessment Report)。
実際には、FSANZによる承認は2025年3月26日、大臣会合への通知は2025年4月7日に遅れたため、最終的な承認は2025年6月中旬になると予想される。
シンガポールの提供レストランは7箇所に拡大
Foovoも昨年、Vowの培養ウズラ「Forge」を使用したフルコースをシンガポールで食べる機会を得た。独特な程よい臭みのある香りが印象に残っている。
公式サイトによると、シンガポールでは現在、7箇所のレストランで「Forge」を使用した料理を提供している。

シンガポールで提供中のレストラン(2025年4月9日時点) 出典:Vow
そのうちの1つ、Two Men Bagel Houseでは、「Forge」をベースとした代替フォアグラ製品としてバーガーメニュー(下記写真)に採用されるなど、一般消費者に身近な食品にも導入を拡大していることがうかがえる。

出典:Vow/Two Men Bagel House
Foovoの調査では、香港では2024年11月にレストランで提供したものの、現在の提供は確認されていない。
今回の決定により、ヒト向けに培養肉が承認された国・地域は、シンガポール、アメリカ、イスラエル、香港、オーストラリア、ニュージーランドへと拡大した。ペットフードを含めるとイギリスも含まれる。
Vowは2019年にオーストラリアで設立された企業であり、カンガルーやアルパカなど、従来食用とされない動物の細胞を用いた培養肉を開発してきた。2023年3月には絶滅したマンモスのDNAから世界初の培養マンモス肉のミートボールも発表した。
過去には、アイスランドで試食会も開催しており、精密発酵で脂肪を開発するNourish Ingredientsと提携し、製品の風味改良にも取り組んでいる。2022年10月に年産30トンの培養肉工場をオーストラリアで開設した。
Green queenの報道によると、先日には2万リットルの大型バイオリアクターで細胞培養を実施し、収穫に成功したと発表した。
これは昨年末に導入されたもので、1基目より33%大きいものとなる。Vowは2基を稼働すると、年産100トンの培養ウズラを生産できると見込んでいる。
参考当局資料
Approval report – Application A1269 Cultured quail as a novel food
Administrative Assessment Report – A1269 Cultured Quail as a novel food
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アイキャッチ画像の出典:Vow