あじかんの「ゴボーチェ」、不二製油の「アノザM」に続き、大手小売のイオンが代替カカオに参入した。
イオンは2025年6月10日、ドイツのスタートアップPlanet A Foods(旧称QOA)が開発したカカオフリー原料「ChoViva」を使用した新製品「チョコか?」を発売した。カカオ豆の高騰と供給不安が続く中、その対応策として導入を決めた。
新製品は、イオン傘下の「イオン」「イオンスタイル」「マックスバリュ」など、沖縄を除く全国約2,200店舗で数量限定販売される(店舗により取扱い状況は異なる)。1袋12枚入り(143g)あたりの価格は398円(税別)(一部に乳成分・小麦を含む)。
「ChoViva」はヒマワリの種などを発酵、焙煎させたものを数段階に分けて粉砕して粉末にし、これに植物油脂などを加えることで、クリーミーで滑らかな質感を再現した代替カカオ原料となる。Planet A Foodsは「ChoViva」のほか、精密発酵によるココアバター開発にも取り組んでいる。

出典:イオン
Planet A Foodsは2022年夏に「ChoViva」を使用したアイスクリームを限定販売。翌2023年9月にはドイツのスーパーマーケット「RWEW」での取り扱いを皮切りに、オンライン・欧州4万店舗以上の小売店へと販路を拡大している。
チョコレートは1kgあたりの温室効果ガス排出量が多く、牛肉、羊肉、チーズ、乳牛に続き、5番目に位置する。「ChoViva」は、チョコレートの楽しみを損なうことなく、気候変動に貢献できる真の選択肢を提供したいという想いから開発された。「ChoViva」を使用することで、1kgあたりの二酸化炭素排出量を従来の5~19kgから2.3kgへ削減できるという。
同社は2025年3月時点で18種類だった製品ラインナップを、わずか3ヶ月で30種類以上に拡充している。
欧州で「ChoViva」が急速に展開する背景には、気候負荷の高いカカオの代替ニーズ、価格高騰、さらに大手・中小企業向けに2025年末からEUで適用される”森林破壊のない地域からのカカオ輸入を義務づける”規制強化などがある。
カカオショックで大手が続々参入

不二製油の「アノザM」 Foovo(佐藤)撮影
これまでのカカオフリー市場は、Planet A Foods、WinWin、Mez Foods、Forever Lands、Nukoko、Fermtechなどスタートアップが牽引してきた。しかし昨今のカカオショックを受けて、国内外で大手企業の参入が相次いでいる。
たとえば、業務用チョコレート大手のBarry Callebautは、2025年4月10日、イギリスおよびベネルクス地域において、ヒマワリ種子を利用したカカオフリー製品を導入したことを発表した(PDF p3-4)。Foovoの調査では、Barry Callebautが過去に「乳製品フリー」製品を手がけた例はあるが、カカオフリー製品を導入したのはこれが初となる。供給元については明かされていない。

Foovo(佐藤)撮影 都内ナチュラルローソンにて
国内では、昨年11月からあじかんが開発した焙煎ごぼう由来の代替チョコレート「ゴボーチェ」がナチュラルローソンに導入され、現在も都内のナチュラルローソン店舗で販売が続いている。
今年3月には不二製油が、エンドウ豆とキャロブを主成分とした代替チョコレート「アノザM」を発売している。筆者も試食したが、完成度の高い仕上がりとなっている。
今回、イオンがカカオショックへの対応として代替原料を導入したことにより、他の国内食品メーカーにも同様の動きが波及する可能性がある。現時点では数量限定の販売にとどまるが、消費者の反応次第では、長期的な導入へと展開が広がることも十分に考えられる。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:イオン