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イスラエルのBeliever MeatsがFDAの安全性審査をクリア、販売に向け前進──大型培養肉工場が米国で完成

出典:Believer Meats

イスラエルの培養肉企業Believer Meatsが今月、アメリカ食品医薬品局(FDA)から「質問なし」のレターを受領し、培養肉についてFDAの市販前協議を完了したと発表した

先日報じられたMission Barnsによる世界初の培養脂肪の販売認可に続くニュースであり、アメリカにおけるFDAの安全性審査を完了した事例としては、Upside FoodsGOOD MeatWildTypeMission Barnsに続く5社目となる。

イスラエル企業で初めて培養肉のFDAレターを受領

出典:Believer Meats

Believer Meatsの前進は、イスラエル発の培養肉・培養シーフード企業にとって、アメリカ市場を含む次の商業化フェーズへ進む呼び水となりそうだ。

SuperMeat以前の報道でアメリカ進出を最優先課題とし、FDA・USDAとの協議を進めながらアメリカで工場建設を計画している。Wanda Fishは地域には言及していないものの、2025年に当局への申請書提出を予定している。

アメリカで、肉や脂肪などの細胞培養食品を販売するには、①FDAの市販前協議を完了(安全性審査)、②アメリカ農務省(USDA)による表示認証、③工場に対する検査証書(GOI)の3ステップをクリアする必要がある。

今回のFDAレター取得により、Believer Meatsは1つ目のステップを終え、販売に向けて残る2ステップとなった。

同社創業者のYaakov Nahmias氏は「動物成分や遺伝子組み換え(GMO)成分を使用せずに、世界初のコスト効率の高い培養肉生産に関するFDAの『質問なし』レターを昨夜受け取ったこと嬉しく思います」とコメントしている

Believer Meatsはまた、ノースカロライナ州ウィルソンの約18,580㎡(20万平方フィート)大型培養肉工場の建設が完了したことも併せて発表した。現在は工場の試運転を進めており、GOI取得に向けた最終調整をUSDAとともに進めているという

同社が2022年12月に建設を開始してから、約3年半強での完成となった。

同工場は、イノベーションセンターや試食キッチンを併設した「世界最大」の培養肉工場とされ、年間12,000トン以上の培養肉の生産が見込まれる

ネスレ、GEAなど大手企業と連携するBeliever Meats

出典:Believer Meats(イスラエルにあるパイロット工場)

Believer Meatsは2024年8月、1リットルあたり0.63ドルという非動物性培地を用いた連続生産により、1mlあたり最大1億3,000万個の細胞からなるバイオマス生成に成功したと報告。このデータに基づいた5万リットル規模の技術経済性分析では、植物性成分を50%、培養鶏肉を50%含むハイブリッド製品を、1ポンドあたり6.2ドル(約890円)で生産できる可能性示されており、コスト競争力の面でも大きな前進があった。

今回のFDAレター取得と工場完成により、同社の商業化計画は大きな転換点を迎えたことになる。昨年10月には、バイオリアクター技術、灌流システム、培地再生技術の発展に向けてGEAとの連携を発表。さらに2025年6月には、アブダビ政府系機関AGWAとの提携を発表し、中東での展開を視野に入れた拠点設置を計画している

2018年設立のBeliever Meatsは、2021年6月にイスラエルに世界初となる培養肉工場(日産500㎏)を開設した実績を持つ。

ネスレCPフーズといった大手企業とも提携しており、2021年12月にはシリーズBラウンドで約3億9,000万ドル(当時約394億円)を調達。今回完成した北米最大規模の培養肉生産拠点を起点に、いよいよアメリカでの展開が現実味を帯びてきた。

今後の注目点として、USDAによる残る2つの認可取得の行方に加え、2021年に発表されたネスレとの共同開発の動向が挙げられる。提携発表後の動向は確認できていないが、ネスレは精密発酵にも参入しており、Believer Meatsの生産体制確立を契機に、培養肉での協業が再び報じられる可能性がある。

 

※本記事は、リンクトインの投稿をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

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アイキャッチ画像の出典:Believer Meats

 

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