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オランダで精密発酵・バイオマス発酵の承認前試食が可能に|2026年前半に試食会開催へ

出典:Vivici

EUで初めて培養肉など細胞性食品の認可前試食を認めたオランダで、新たに精密発酵やバイオマス発酵の試食が可能となった。

オランダ政府は先月24日、承認前の革新的な発酵食品について、一定の条件下での試食会を実施できる枠組みをEUで初めて示した。政府によると、2026年初頭に最初の試食会開催が計画されている

公表された「EU承認前の革新的な発酵食品の試食の安全な実施に関する行動規範(Code of Practice for Safely Conducting Tastings of innovative fermentation-based food Prior to EU Approval)」は、「革新的な発酵食品」を「バイオマス発酵または精密発酵で製造された新規食品原料」と定義している。

行動規範の策定では、オランダのバイオテック業界団体HollandbioCellular Agriculture Netherlandsに加え、ViviciThe Protein BreweryThose Vegan CowboysNoPalm IngredientsFarmlessなどのスタートアップらと協力した。これにより、オランダは培養肉に続き、バイオマス・精密発酵食品でもEU初の試食制度を整えた。

出典:The Protein Brewery

今回の試食解禁の背景には、発酵技術がAIやバイオ技術の進展により急速に進化し、オランダ企業が成長する一方で、バイオマス発酵や精密発酵による食品の試食が認められないことが、企業にとって障壁となっていた事情がある。

2022年には精密発酵を含む細胞農業分野に6,000万ユーロ(当時約82億円)の公的投資が発表されたが、EU未承認の原料は試食できず、企業は試食を実施できない状態が続いていた。

この課題を受け、Wim Meulenkamp議員Laura Bromet議員が昨年10月、安全管理のもとでの発酵食品の限定的試食を求める動議を提出し、これが広く支持された。政府はイノベーション促進と食料安全保障上、および供給力のローカル化の観点から、行動規範という形で枠組みを整備した

行動規範によると、EU未承認の発酵由来食品の試食を行うには、企業が安全性データをまとめて専門家委員会へ申請し、全会一致の承認を得る必要がある。申請する企業は、オランダ国内に事業体以上の実質的な拠点を有している必要がある。

試食は30名以下最大10回最長1年間までで、企業が管理する非公開の環境でのみ実施可能。参加者として投資家、メディア、規制当局、政府の関係者を想定しており、参加者は成人で健康状態を自己申告し、事前同意が必須となる。

アレルギー確認、微生物基準、毒性値などのリスク評価を経て、緊急対応体制も求められる。承認後は日程を当局に通知し、試食後2週間は有害事象のモニタリングが義務づけられる。

昨年開催されたモサミートの試食会 出典:Mosa Meat

オランダでは2023年に細胞性食品の試食が認められ、これまでにモサミートMeatableが試食を実現している。今回の決定により、精密発酵でホエイやラクトフェリンを開発し、ホエイに関してアメリカのGRAS認証を取得しているViviciや、EU承認に近づいているバイオマス発酵のThe Protein Breweryなどの発酵企業が、承認を待たずにオランダで試食会を開催できる道が開かれた。

精密発酵などの新規食品は、EUの承認を経なければ一般消費者に提供することができず、承認前の試食も難しかった。そのため、企業や研究機関は味や食感の改善に必要なフィードバックを得られず、開発が停滞しやすいという課題を抱えていた。

今回、1回あたり最大30名まで、年間10回以内の試食が可能になったことで、限られた範囲とはいえ、市場投入前の評価を得る道が開かれたこととなる。企業は参加者の反応を踏まえた改良を進められるようになり、オランダにおける発酵分野のイノベーションがさらに加速するとみられる。

国内でも肉や魚を対象とした細胞性食品のガイドライン整備が進み、今年には国内で細胞性食品の官能評価会が3回開催された

 

※本記事は、行動規範およびオランダ政府のプレスリリースもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

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アイキャッチ画像の出典:Vivici

 

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