出典:Melt&Marble
精密発酵で脂肪を開発するスウェーデンのMelt&Marbleは今月8日、シリーズAラウンドで730万ユーロ(約13億円)を調達したと発表した。
2026年にパーソナルケア用途で初の市場投入を計画しており、既存の製造パートナーを通じて生産することで、設備投資を抑えながら事業化を進める考えだ。
精密発酵による脂肪や油脂の開発では、2022年のNourish Ingredients、2020年のC16 Biosciencesなどに続く、シリーズAラウンドへの進出事例となる。
欧州委員会の欧州イノベーション評議会(EIC)のファンドや、今年1月に戦略的提携を締結したフィンランドの大手乳業メーカーValioなどがラウンドに参加した。
Melt&MarbleがシリーズAで約13億円を調達

出典:Melt&Marble
Melt&Marbleは、代替肉や代替乳製品、チョコレート製品、ベーカリーなどの食用油脂と、スキンケア・ヘアケア向けの油脂「Marble7」を開発している。調達した資金で、生産を拡大し、最初の市場投入を目指す方針だ。
ValioのバイスプレジデントであるSusanna Kallio氏は「細胞農業によって生産される食品は、私たちの未来の食料システムで重要な部分を占めるでしょう。細胞農業ソリューションを発展させるには、既存企業とスタートアップ企業の連携が不可欠です」とプレスリリースで述べている。
Melt&Marbleの精密発酵プラットフォームは、動物由来成分を使わずに設計可能な脂肪構造を提供できる点が特徴で、食品の食感や口当たりの向上から、化粧品における肌触りや生理活性の向上まで、優れた機能性を引き出すとしている。
同社は昨年9月、発酵プロセスを1万リットル以上にスケールアップし、デモ運転で大量の脂肪生産に成功したと発表した。
上市の優先順位を食品からパーソナルケアへシフト

出典:Melt&Marble
昨年7月のプレスリリースでは、代替肉向けの脂肪「MeatyMarble」が最初の市場投入製品となるとしていたが、今回の発表ではパーソナルケア分野からの参入を目指す方針が明確に示された。
同社の最近の動きからも、化粧品ファーストに軸足を移したことがうかがえる。
パーソナルケア・美容部門の事業開発販売部長の募集や、公式サイトでパーソナルケア専用ページの開設に加え、2025年以降は、美容用脂肪の持続可能性をアピールする投稿や、サプライチェーンのクリーン化への対応策としての提示、精密発酵による美容用脂肪の新処方の可能性を訴求する投稿などが、食品用途に比べて目立つようになっている。
この流れは、Avantやインテグリカルチャーといった細胞性食品企業にもみられる。これらの企業も、化粧品分野からの上市を進めており、Umami BioworksやImpacFat、Bluuといった企業による後続の動きも見られている。
英Clean Food Groupも今年秋、欧州・イギリス・アメリカで酵母由来の油脂「CLEAN Oil 25」が化粧品原料として使用可能になったと発表している。精密発酵や細胞性食品を含む細胞農業分野では、食品に先行して、規制対応や市場投入のしやすいパーソナルケア用途から商用展開を図る例が出てきている。
黒字化が目前になったことを先月発表したインテグリカルチャーのように、既に事業として成立しつつある事例も国内で示されており、食品と並行して、規制対応や市場投入のしやすい化粧品分野から収益化を図る戦略は、今後さらに広がっていきそうだ。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Melt&Marble





















































