代替プロテイン

レタスとタバコの葉緑体でミオグロビン生産、英研究チームが実証

出典:Imperial College London

イギリスの研究チームは、レタスとタバコ植物の葉緑体を用いて、ミオグロビンを生産できることを実証した。

イギリスのバイオテックスタートアップKyomeiと、インペリアル・カレッジ・ロンドン(Bezos Centre for Sustainable Protein)の研究者らによるもので、研究成果はFrontiers in Plant Scienceに公表された。

ミオグロビンは、動物の筋肉に豊富に含まれるタンパク質で、肉に独特の風味と旨みを与える成分とされる。肉が赤みを呈するのはミオグロビンによるものだ。

大豆などの植物タンパク質を原料とした代替肉では、焼いた時に赤色から茶色に変化する様子を再現するのが難しい。代替肉で知られる米インポッシブルフーズは、微生物を用いる精密発酵により、大豆レグヘモグロビンというミオグロビンに似たヘムタンパク質を生産し、これを用いて焼いた時に色が変わる植物肉を開発した(下記画像)。

インポッシブルフーズの代替肉が加熱で色が変化する様子 Foovo(佐藤)撮影/2024年7月

インポッシブルフーズが用いた精密発酵では、微生物が「生産工場」として特定成分を生成するが、今回の研究事例は、植物を用いて目的成分をつくらせる手法で、植物分子農業といわれる。ここでは植物が「生産工場」の役割を果たす。

葉緑体でミオグロビン生産、課題はヘムの取り込み

出典:Kyomei

研究チームは、植物の葉緑体でミオグロビンを生産できるかを試みた。

論文によると、豚由来のミオグロビン遺伝子をタバコとレタスの葉緑体に組み込んだ結果、葉緑体を遺伝子操作したタバコの葉は、乾燥重量1kgあたり約800mgのミオグロビンを生成し、レタスでは約810mgのミオグロビン生成が確認された。通常の肉では乾燥重量1kgあたり8100~11,160mgのミオグロビンが含まれるという。

収量では動物肉の約10分の1と劣るものの、植物による生産は畜産よりも資源効率が良いとし、「動物の筋肉に匹敵するにはさらなる最適化が必要」と結論づけている。

葉緑体を用いた理由についてAlexia Groff博士は、「葉緑体は細菌を起源とし、細胞あたりのコピー数が多いため、一般に細胞核よりも大量のタンパク質を生成する能力に優れています」と述べている。

論文ではまた、葉緑体はヘムの生成部位でもあるため、ミオグロビンの発現場所として興味深いとしている。

論文によると、植物由来のミオグロビンが肉らしい色や風味に関わる機能を発揮するにはヘムの取り込みが重要とされる。大腸菌で生産したミオグロビンではヘム結合率が80%であるのに対し、タバコ由来では約35%にとどまり、ヘムの利用可能性やミオグロビンへの取り込みが障壁となっている可能性が示唆された。

一方、食用作物のレタスを「生産工場」に使うことで、最小限の精製または精製なしで、レタスのバイオマスごと食品原料として利用できる可能性があり、拡張性とコスト面での利点があるとしている。

動物由来のミオグロビンを植物で生産できるようになれば、植物肉の味や風味、栄養価を向上できる可能性がある。

Foovoの調査では、現時点で植物肉向けにヘムタンパク質を使用した商品の販売を確認できたのはインポッシブルフーズ1社に限られる。精密発酵でミオグロビンを開発していたMotif Foodworksは2024年に閉鎖した。

今回の結果を受けて、Rodrigo Ledesma-Amaro教授は、食用作物を含む植物の葉緑体でミオグロビンの安定的な生産が実証されたことで、微生物発酵と並んで、植物を拡張可能で投入資源の少ない生産プラットフォームとして活用する可能性が開かれたと評価している。

植物分子農業によるミオグロビン生産では、IngredientWerks、Moolec Scienceがあるが、いずれも上市は確認できていない。

研究に参画したKyomeiは、ケンブリッジを拠点とするスタートアップ。同社は残渣作物の葉を用いて、クリーンラベルや健康的な食品原料の開発に取り組んでおり、現在はルビスコの開発に焦点をあてている。

同社の共同創業者兼最高科学責任者(CSO)の森本恭子氏は、「ミオグロビンを発現するように遺伝子操作された食用レタスが承認を得られれば、将来的にヘム鉄を強化した栄養強化食品としても利用されることを期待しています」と述べた。

 

※本記事は、プレスリリースおよび論文をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

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アイキャッチ画像の出典:Imperial College London

 

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