植物由来食品の味・栄養の改良を目指す米フードテック企業Motif FoodWorksは、精密発酵を使用した次世代アニマルフリータンパク質を開発するため、Vectron Biosolutionsと提携したことを発表した。
Vectron Biosolutionsはこれまでは医薬品の分野に注力してきたノルウェーのバイオテック企業であり、2社は2年前に提携を開始した。Motif FoodWorksはVectronの菌株開発と遺伝子発現技術を活用し、代替乳製品の味・食感を改善し、植物由来食品の栄養を改善する技術開発に取り組む。
精密発酵は、発酵時に特定のタンパク質を生成するように酵母などの微生物を改変する技術であり、数十年前から医薬品と食品製造の場で使用されてきた。食品での使用はチーズの凝乳酵素レンネットの生産に限定されていたが、数年前からアメリカを中心に乳タンパク質や卵白タンパク質の市販化が実現している。
Motif FoodWorksは1つの技術にこだわることなく、消費者の必要性を解決できる最適な技術を使用する点で、他社よりも広いレンジを持つ企業だといえる。
プレスリリースの中でも、自社を「特定のプラットフォームにこだわらない」プレーヤーだと述べている。Motif FoodWorksが昨年ローンチしたミオグロビンタンパク質の「HEMAMI」は精密発酵技術で作成されているが、植物肉の食感を改善する成分「APPETEX」は精密発酵ではなく、材料科学などのプラットフォームのイノベーションにより作成されている。
今回の発表により、Motif FoodWorksは独自ヘムに続き、代替乳製品分野でも精密発酵技術を採用することとなる。
VectronでCEOを務めるTrond Erik Vee Aune氏は、「当社はこれまで製薬分野に注力してきました。Motifと共に食品分野へ参入することは嬉しいことですし、面白い変化であります」と述べている。
現在、精密発酵で動物タンパク質を代替する企業は世界で急増しており、その対象領域は、乳タンパク質、卵白タンパク質から、脂肪、ハチミツ、ヘム、コラーゲンなど多岐にわたる。代表的事例は米パーフェクトデイが開発した乳タンパク質であり、スタートアップ企業や大手企業を通じて商品化されているが、市場投入はまだ黎明期といえる。
菌株開発に知見を有する企業との提携事例は、Motif FoodWorksとVectronのほか、ドイツ企業FormoとBrain Biotechの例も報告されている。精密発酵に参入する企業数を考えると、今後こうした提携がさらに増えていくと予想される。
参考記事
Motif FoodWorks and Vectron Biosolutions Partner on Protein Development
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アイキャッチ画像の出典:Motif FoodWorks