フランスの培養肉企業Vital Meatがシンガポール食品庁(SFA)に新規食品(Novel Food)の申請書類を提出したことを発表した。
Vital Meatは気候変動へ対応するという使命のもと、Frederick Grimaud氏とEtienne Duthoit氏により2018年に設立された。
公式サイトによると、現在の開発対象は培養鶏肉だが、長期的には細胞培養により豚肉や白身魚の開発も視野にいれている。培養鶏肉は9種の必須アミノ酸、ビタミンB12、鉄分など栄養を含んだものとなる。
同社は最近、スケールアップに向けて欧州の大手培地メーカーであるBiowestと戦略的パートナーシップを締結した。
インポッシブル・フーズに以前勤めていた同社COO(最高執行責任者)の述べている。 氏は、Biowestとの提携は、培地の品質とトレーサビリティを保証し、培養鶏肉のスケールアップに通じるものだと
培養肉先進国シンガポールにおける申請状況
フランス議会が最近、フランス国内での培養肉の製造・販売を禁止する法案を国会に提出するなど、国内での逆風に見舞われる中、Vital Meatは培養鶏肉の上市に向けてSFAへの承認申請を行った。
欧州を拠点とするVital Meatが最初の申請先にシンガポールを選んだ背景には、2030年までに食料自給率を30%に引き上げる「30 By 30」というシンガポールの国をあげた取り組みと、欧州の新規食品規制が複雑で時間がかかり、承認された企業がいまだないことが関係している。
シンガポールでは、これまでに米GOOD Meat(イート・ジャストの培養肉部門)の培養肉が販売を認められている。GOOD Meatは2020年末と2021年末にそれぞれ培養鶏肉製品で販売認可を取得した。
イート・ジャスト共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のジョシュ・テトリック氏が以前、培養肉を海外生産するうえで「シンガポールはハブ」になると述べた通り、シンガポールでの培養肉販売を狙う企業は増える一方だ。
これまでにシンガポール進出を目指していることが判明している国は、オーストラリアのVow、オランダのMeatable、モサミート、イスラエルのアレフ・ファームズ、中国のCellX、ドイツのBLUU Seafoodなど多数確認されており、欧州企業を含め各国の企業が進出を目指してる。
シンガポール企業ではUmami Bioworksが年内に承認申請するとFoovoによるインタビューで回答していた。
アレフ・ファームズ、Vowは今年中にシンガポールで発売を見込んでいた。本記事を作成時点で承認は確認されていないが、二社がSFAに申請済みである可能性は高い。
このほかシンガポールで培養肉製造許可を取得しているEsco Asterと提携している韓国のSeawithも、シンガポール進出を考えているとみて間違いないだろう。
Vital Meatの培養鶏肉製品がSFAに承認されると、同社がシンガポールで認可を取得した欧州初の企業になる可能性がある。Vital Meatは今後数ヵ月以内にSFAから承認を得られると見込んでいるようだ。
フランスで細胞培養によるタンパク質開発に取り組む企業ではVital Meatのほかに、フォアグラを開発するGourmey、母乳を開発するNūmiが確認されている。
参考記事
France’s Vital Meat Submits Pre-Market Dossier to Launch Cultivated Chicken in Singapore
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アイキャッチ画像の出典:Vital Meat