出典:Aleph Farms
細胞性食肉(培養肉)を開発するイスラエルのアレフ・ファームズは今月11日、同社初の欧州生産拠点をスイス、ケンプタールに設置するため、The Cultured Hubと基本合意書(MOU)を締結したと発表した。
The Cultured Hubは、スタートアップ企業のスケールアップを支援するインフラを提供するため、ミグロ、ジボダン、ビューラーグループの合弁事業として2024年12月に開設された。
1600㎡の施設は同時に3社が利用でき、それぞれの企業が完全に分離されたスペースで知的財産を保護しながら活動できる仕組みを備えている。ラボスケールから1,000リットルのパイロットスケールまでのスケールアップを可能としている。
アレフ・ファームズは、2023年夏にスイス当局に細胞性牛肉の承認申請を提出済みで、規制クリア後の欧州展開に向け、ケンプタールを欧州の生産拠点とする。
同社の共同創業者兼CEO(最高経営責任者)を務めるDidier Toubia氏は「このパートナーシップにより、資本効率に優れ、現地市場に深く根ざした、当社のグローバル戦略を最適に実施することが可能になります」とプレスリリースで述べた。
Toubia氏は昨年2月にタイでの細胞性食品工場の建設でBBGI、Fermbox Bioと提携した際も、「慎重で資本効率の高いスケールアップ」でインフラ投資を進める重要性に言及した。今回のThe Cultured Hubとの提携も、アレフ・ファームズが進めてきたアセットライト戦略(多額のインフラ投資を回避して事業拡大する手法)の一環といえる。
粗利益率47%を見込むアレフ・カット

出典:Aleph Farms
この発表は、アレフ・ファームズ製品の商業性を裏付ける試算発表に続くニュースとなる。
ビューラーとZETAの合弁会社であるEridiaが実施した技術経済性分析(TEA)では、アレフ・カットが牛肉と競合可能な価格帯で47%の粗利益率を達成できることが先日発表された。
5,000リットルのバイオリアクターを前提としたTEAでは、生産コストを1ポンドあたり6.45ドル(約950円)、卸売価格を1ポンド12.25ドル(約1810円)と想定し、年間純利益7,850万ドル(約116億円)、粗利益率47%、投資回収期間は最短2.5年と試算している。
スイスでの認可への期待

出典:The Cultured Hub
2017年設立のアレフ・ファームズは、細胞性食品企業の多くがひき肉開発に着手していた2018年に世界初の細胞性薄切りステーキ肉を発表するなど、初期からステーキ肉の開発に注力してきた。
2021年には三菱商事、タイ・ユニオン、CJ第一製糖、BRFなど複数の大手企業と提携し、世界各地での展開に向けたパートナーシップを拡大。
2021年には3Dプリンターを使用して細胞性リブロース肉を開発し、2022年には細胞性コラーゲン事業への参入を発表した。
細胞性食肉については、これまでにスイス、イギリス、タイ、シンガポールで承認申請を提出しており、2024年1月には世界に先駆けてイスラエルで細胞性牛肉の認可取得を発表した。
同社はイスラエルを含め、いずれの地域でもまだ販売を実現していないが、今回の発表により欧州で認可取得後を見据えた動きがさらに前進したこととなる。
2025年は、アメリカで細胞性サーモンおよび細胞性脂肪が世界で初めてレストランで提供され、市場投入が実現した。シンガポールでは細胞性ペットフードの認可が下り、オーストラリア・ニュージーランドでもVowが細胞性ウズラの販売認可を取得するなど、ヒト・ペットいずれにおいても認可地域が広がっている。
こうした流れから、アレフ・ファームズがスイス当局に申請してから2年が経つ現時点で、スイスでの販売認可にも注目が集まる。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Aleph Farms