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イスラエルで精密発酵ホエイが本格始動──RemilkとGad Dairiesが「The New Milk」を市場投入、来月小売展開へ

出典:Remilk

イスラエルの精密発酵ホエイ市場が動き出している。今年9月に市場投入が報じられたImagindairyに続き、同国で最初に販売認可を取得したRemilkがついに精密発酵ホエイをイスラエル市場に投入する。

イスラエルのフードテック企業Remilkは今月10日、精密発酵乳タンパク質を使用した代替ミルクシリーズ「The New Milk」の発売を発表した

イスラエルで4番目に大きい乳業メーカーGad Dairiesとの提携によるもので、3製品の展開を予定している。

Gad Dairiesはこれまで「Alpro」や「Vive Soy」などの植物性ミルク製品を取り扱ってきたが、自社ブランドとして精密発酵由来の乳タンパク質を用いたミルク製品を本格展開するのは今回が初となる。

Remilkにとって実質的に初の“本格的な市場投入”

出典:Remilk

プレスリリースによると、「The New Milk」シリーズの第1弾として、バリスタミルクがイスラエル国内のカフェやレストランで展開されている。

来月には第2弾として「毎日飲めるミルク」および「バニラ風味ミルク」の2製品を小売市場に投入される予定だ。さらに2026年1月には、大手スーパーマーケットチェーンへの導入が計画されている。

Remilkがイスラエルで精密発酵乳タンパク質の認可を取得したのは2023年4月。約2年半を経てイスラエルでの初販売となる。

一方、イスラエルではStrauss GroupがImagindairyのホエイを活用したクリームチーズと飲料を9月に発売しており、わずか数か月の間に2社が相次いで精密発酵乳製品を市場投入したことになる。

Remilkはこれまでにアメリカ、シンガポールカナダを含む4市場で販売認可を取得している。

Foovoの調査では、Remilkの原料を使用した製品が一般消費者に届くのは、2023年1月に食品大手General Millsがクリームチーズ「Bold Cultr」をアメリカで発売した事例に続く2例目となる。ただし、General Millsは翌2月に同ブランドの終了を発表しており、「Bold Cultr」の販売期間は短かった。

したがって、今回のイスラエル市場への投入は、Remilkにとって初の“本格的な市場投入”と位置付けられる。

精密発酵ミルクが直面する「味の壁」

出典:Remilk

乳タンパク質は大きくホエイ・カゼインに分類される。Remilkが認可を得ているのはホエイで、微生物を用いた精密発酵技術によって動物成分を一切使用せずに製造されている。生成されるタンパク質は、牛由来のホエイと同一だ。「The New Milk」は乳糖やコレステロールを含まないため、糖分は通常の牛乳よりも75%少ないという。

筆者は以前、米パーフェクトデイのホエイを使用した精密発酵ミルク「Very Dairy」をシンガポールで試飲したミルク製品は、精密発酵技術を一般消費者に届けるうえで最も身近なカテゴリーの1つだが、同時に売上や販売個数などの形で市場の反応がダイレクトに現れる領域でもある。

Foovo(佐藤あゆみ)撮影 2022年12月/シンガポール

Very Dairy」は牛乳に比べてコクが弱く、やや水っぽさを感じた。カゼインは含まずホエイのみを使用し、乳脂肪を含まないことが要因だと考えられる。

同社はその後B2Bにシフトしたため、シンガポールで展開されていた「Very Dairy」やアイスクリーム「Coolhaus」などのブランドはすでに終了している。

同様に、パーフェクトデイのホエイを使用したミルク製品「Bored Cow」は公式サイトが閉鎖され、SNSの更新も途絶え、アメリカでの販売が終了されている可能性が高い。実際に試した人のレビューでは、“薄さ”や“水っぽさ”を指摘する声が確認された。

これらの事例は、ホエイだけを使用した精密発酵ミルクが、味覚面で課題を抱えうることを示唆している。一方で、Remilkはプレスリリースのなかで「濃厚で本格的な味わい」をもたらすと述べており、どこまで実現されているのか、新製品の味に期待したい。

Gad Dairiesが展開する「The New Milk」シリーズが、イスラエルの消費者からどのような評価を受け、リピートを獲得できるかが注目される。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

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アイキャッチ画像の出典:Remilk

 

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