出典:Pinnacle Food Group
垂直農法と水耕栽培で事業を展開するカナダ企業Pinnacle Food Groupが、香港を中心に精密発酵の事業化に向けた基盤づくりを進めている。
同社は4月15日、香港の研究所で、精密発酵でヒトラクトフェリンを生産する第一世代の組換え酵母株を作製したと発表した。
4月20日には、香港子会社Pinnacle Food AgTech HKが、Open Yeast CollectionおよびBioboost Synbio Consultingとの間で、香港・深圳イノベーション&テクノロジーパーク(HSITP)にオープンな酵母イノベーションハブ設置を検討する拘束力のないMOU(基本合意書)を締結したと発表した。
メタノール不使用の酵母発酵でヒトラクトフェリン生産へ

出典:Helaina
プレスリリースによると、メタノールは可燃性かつ毒性があり、発酵で使用するにあたり、防爆設備に多額の設備投資が必要だった。研究チームは、Bioboostとの共同研究を通じて利用するメタノール不使用のピキア発酵法により、精密発酵でヒトラクトフェリンを生産する酵母株を作製した。
メタノールを使わないことで火災リスクや運用コストを抑えられるほか、毒性残留物を避けられる点が乳児栄養や医薬品用途で重要だとしている。
Pinnacle Food Groupは同プラットフォームについて、すでに他のタンパク質でパイロットスケールの検証を終えているという。
HSITPに設置を検討する酵母イノベーションハブは、DNAパーツを集めたオープン酵母コレクションと、研究者向けのオープン酵母株バンクで構成される。
DNAパーツと酵母株は、オープンな材料移転契約(Open Material Transfer Agreement)の枠組みで提供される。Pinnacle Food Groupはこの構想により、酵母研究の参入障壁を下げ、自社のバイオ製品の商用化に向けたB2B戦略を加速させたい考えだ。
水耕栽培システムの開発企業が精密発酵への参入を目指す理由

出典:Pinnacle Food Group
Pinnacle Food Groupは精密発酵分野で出発した企業ではない。
同社の前身であるPinnacle Coffeeは2015年にカナダ・バンクーバーで設立され、2016年にPinnacle Foodへ社名変更した。
当初はアジア市場向けに高麗人参製品の加工・輸出に注力していたが、2022年からスマート農業サービスに重点を移している。2023年には水耕栽培システムの提供を開始した。
現在は垂直農法・水耕栽培システムを主軸に、スマート農業とバイオエンジニアリングの融合分野で事業を展開している。
同社が精密発酵に取り組む理由は、「バイオエンジニアリング領域」を、スマート農業に続く成長エンジンと位置づけているためだ。
3月13日の投資家向け説明会で同社は、農業サービス事業を安定した収益基盤と位置づけ、バイオエンジニアリングを拡張性のある成長領域とする「デュアルエンジン戦略」を発表した。その中で、初期ターゲットとして高付加価値な精密発酵ヒトラクトフェリンの商用化に注力する方針を示した。
精密発酵によるヒトラクトフェリンの商用化では、米Helainaが先行している。Foovoの調査では今年4月時点で、同社ヒトラクトフェリンはサプリメントを中心に11の商品に採用され、昨年から倍増している。
このほか、オーストラリアのAll Gもヒトおよびウシラクトフェリンの商用化を進めている。同社は今年3月、精密発酵によるウシラクトフェリンについてFDAから「質問なし」のレターを受領しており、Armor Protéinesとの合弁事業を通じてヒトラクトフェリンの商用化も目指している。
※本記事は、プレスリリース①・②・③をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
フードテックの国内外ニュースを週1回まとめてお届けしております。
メールマガジン登録はこちらから
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Pinnacle Food Group



















































この記事へのコメントはありません。