代替プロテイン

英国、精密発酵で初の安全性ガイドライン公表|代替タンパク質を「大きなチャンス」と位置づける

出典:Better Dairy LinkedIn

イギリスで昨年12月、細胞性食品の安全性ガイダンスが公表されたことに続き、精密発酵でも制度面の前進がみられている。

英国食品基準庁(FSA)とスコットランド食品基準庁(FSS)は3月12日、精密発酵食品に関するイギリス初の安全性ガイダンスを公表した。

3月19日の英下院では、食料安全保障・農村地域担当大臣のAngela Eagle氏が、代替タンパク質は経済、食料レジリエンス、健康および持続可能性の面で「大きなチャンス」だと述べ、FSAと連携して精密発酵技術を加速するために新規食品プログラムに取り組んでいると述べた。

英国、精密発酵で初の安全性ガイドライン

出典:FSA UK safety guidance on precision fermentation products

新たに発表されたガイドラインではまず、精密発酵について、細菌や酵母などの単細胞微生物を管理された環境下で培養し、タンパク質、脂質、ビタミンなど特定分子を作らせる技術と定義した。また、発酵後には対象成分を培養液から抽出・精製し、最終食品には生きた微生物が残らないことを前提としている。

ガイドラインではまた、精密発酵の製造工程のいずれかの段階で動物由来の細胞、組織、物質が導入または関与する場合、衛生規則上はその製品をProducts of Animal Origin(動物由来製品/POAO)として扱うとした。

逆に、微生物に組み込む遺伝情報が動物組織や細胞から直接取り出されたものではなくデジタル的に取得され、かつ、製造に用いられるDNAが合成されたものである場合、動物由来とはみなさないと整理した。

精密発酵企業にとっては、使用する遺伝情報や原料が動物由来製品に該当するかを左右することになる。ただし、精密発酵によるβ-ラクトグロブリンでは、例えばイスラエル企業RemilkのGRAS公開文書では、遺伝子配列が合成であると明記されており、少なくともβ-ラクトグロブリンではこの規定に該当する企業は少ないのではないかと思われる。

精密発酵の補足ガイダンスも公表、申請ルートの可視化進む

イギリスでは3月20日、FSA/FSSおよびEFSAの新規食品ガイダンスを補完するものとして、精密発酵・バイオマス発酵由来の新規食品に関する補足ガイダンスも公表された。

製品の同一性および組成の明確化、バイオインフォマティクス、栄養価に関連するタンパク質の消化率、アレルギー誘発性など、申請で繰り返される課題が整理された。FSAは補足文書の目的を、審査側が主要ポイントをどのように解釈しているかを明確にすることだとしている。

FSAは同時に、イギリスで革新的食品を上市するうえでの主要な規制も公表している。精密発酵や細胞性食品を含め、販売認可が必要な製品、既に承認されているかを確認する方法、さらには申請方法などが説明されている。

精密発酵については、遺伝子組換え微生物が最終製品から完全に除去されていれば、通常は新規食品に分類される可能性が高い一方で、微生物が残存する場合はGMO規制の対象になり得ると説明している。また、用途によっては食品添加物や香料の規制も追加で適用される可能性に言及している。

そのため企業は、「精密発酵で作った」という点だけでなく、最終製品に何が残るか、食品中でどんな機能を果たすかまで含めて申請ルートを見極めなければならない。枠組みが明確にされつつある一方で、誤った枠組みを選ぶと審査遅延につながる可能性がある。

申請前相談の試験運用を実施

出典:FSA  Precision Fermentation Business Support Service (BSS)

想定される誤った枠組みでの申請を避けるため、イギリスでは精密発酵企業向けの試験的な申請前相談の仕組みも始まっている。

精密発酵事業支援サービス(BSS)は2025年9月に始まり、今月31日まで運用される試験制度で、イギリス市場への申請を目指す企業や既存申請企業を支援するものだ。開発段階に応じて3段階の支援区分が設けられ、開発が最も進んだ第1フェーズでは個別面談も行われる。

この一連の動きは、イギリスが代替タンパクの研究支援だけでなく、実際の市場投入を見据えて、制度整備を進める段階に入ったことを示している。

FSAは、2025年~2035年の10年間で、イギリス市場に到達する可能性が高い食品技術として、精密発酵、細胞性食品、バイオマス発酵、分子農業、ガス発酵、食用昆虫などを挙げている。

出典:FSA Top emerging UK food innovations: 2025-2035

その中でも、精密発酵、細胞性食品、バイオマス発酵、食用昆虫などについては、今後5年以内に影響力が大きく、実現可能性が期待できる技術だとの認識を示し、明確なガイダンス・消費者調査・透明なコミュニケーションを通じて、イノベーションと安全性の両立を図る方針を示している。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Better Dairy LinkedIn

 

関連記事

  1. 味の素がイスラエルの培養肉企業スーパーミートに出資、培養肉の商用…
  2. チリのNotCoが米国進出、全米のホールフーズで代替ミルクの販売…
  3. New Cultureが世界で初めて精密発酵カゼインでGRAS自…
  4. 米Friends & Family Pet Food、…
  5. 再生医療学会・培養肉シンポジウムレポート|再生医療研究者が「培養…
  6. 微生物とAIで新素材を発見するKingdom Supercult…
  7. 微細藻類オメガ3を開発するMara Renewables、約13…
  8. 牛を手放し「型破り」な転身を実現したイギリス農家と、それを支援す…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

藻類を活用した代替タンパク質製品を開発するAlgama Foodsが約2.6億円を獲得、ビーガンシーフード分野へ注力

藻類や微細藻類の力を利用して代替タンパク質製品を開発するフランスのAlgama …

Belグループ、精密発酵クリームチーズ「Nurishh」の販売を終了|Foovo独自レポート

出典:NurishhBelグループは今月4日、「Nurishh」ブランドの精密発酵クリームチーズ…

アニマルフリーな乳タンパク質を開発するイスラエルRemilkが約11億円を調達

イスラエルを拠点とするRemilkがシリーズAラウンドで11…

カーギルとVoyage Foods、代替カカオ素材「NextCoa」を米国で展開

出典:Voyage Foods米食品大手Cargill(カーギル)と米Voyage Foodsは…

光を使わずに微細藻類由来のアスタキサンチンを生産|米Kuehnle AgroSystemsがシリーズBで資金調達

出典:Kuehnle AgroSystems2026年8月5日更新光を使わずに非遺伝子組…

ビヨンドミートが日本市場進出へ|U.S.M.Hと独占販売契約を締結

アメリカの代替肉企業ビヨンドミートが日本市場に参入する。ユナイテッド・ス…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

次回Foovoセミナーのご案内

細胞性食品(細胞培養食品)レポート販売開始

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

PAGE TOP