タイの商用生産設備 出典:Spiber
精密発酵で開発したタンパク質の課題の一つが、スケールアップだ。研究室規模では高い生産性が得られても、設備を大型化すると同じ結果を再現できるとは限らない。商用規模まで対応できる発酵設備の不足も、事業化の障壁となっている。
こうしたなか、山形県を拠点とするSpiber(スパイバー)は10月2日、自社の構造タンパク質素材「Brewed Protein」の量産で培った技術を外部企業に提供する受託事業「SPIBER BIOFOUNDRY」を開始すると発表した。
食品素材をはじめ、研究用試薬、産業用酵素、診断原料などを対象に、菌株の設計から試作、商用生産までを支援する。
精密発酵技術を食品用タンパク質の開発にも応用

出典:Spiber
プレスリリースによると、同社のBrewed Proteinは40以上のブランドに採用され、200以上の製品が上市されている。
Brewed Proteinは、主にサトウキビ由来の糖を原料に、精密発酵によって生産されるタンパク質素材。これを繊維に加工した「Brewed Proteinファイバー」は、シルクのような光沢、カシミヤの滑らかさ、ウールのふんわり感を提供でき、動物に依存せず製造できる。従来のカシミヤと比較して、温室効果ガス排出量や水使用量、土地利用などの削減が見込まれるという。
非食品領域で素材を開発してきた同社だが、昨年9月には、精密発酵技術を活用した食品用タンパク質素材の開発を進めていることを発表した。
ゲル化、結着、乳化、増粘などの機能を持つ食品原料に加え、アレルゲンフリーのタンパク質や特定の栄養素を持つタンパク質の開発にも取り組んでいる。代替タンパク質、機能性食品、飲料、ペットフードなどへの応用を想定し、食品メーカーや原料メーカーなどとの協業も進めている。
10万L超の商用設備を活用、菌株開発から受託製造まで

タイの商用生産設備 出典:Spiber
同社は約20年にわたり、遺伝子配列の設計から菌株の開発、量産スケールでの発酵・精製までを手掛け、タイに10万Lを超える商用生産設備を構築してきた。今回、これらの基盤を自社素材以外のタンパク質生産にも活用する。
新事業では、目的タンパク質の生産量を高める菌株開発と、プロセス開発・受託製造を提供する。後者では1L規模から10万L超の商用生産まで対応する。
公式サイトによると、これまで菌株開発に取り組んだ目的タンパク質の90%超で、生産性の向上を達成した。生産性の向上率は平均4倍で、最大40倍に達したという。また、自社タンパク質については、商用設備で50g/Lの生産濃度を実現している。
菌株開発ではバクテリア、受託製造ではBSL-1(※)の微生物を対象とし、代謝経路の最適化には対応していない。
※BSL-1(バイオセーフティレベル1)とは、微生物の危険度に応じた分類のうち最も低いレベルで、健康な成人に通常は病気を引き起こさず、人体や環境への危険性が低い微生物が該当する。
Spiberはこれまで、自社素材の生産・販売を事業の中心としてきたが、今回の取り組みでは培ってきた生産技術を外部に提供する。
代表取締役兼CEO(最高経営責任者)の川名麻耶氏は、研究室で成功した発酵を大規模な生産設備で再現し、市場に受け入れられる価格で安定生産する最後の段階にこそ、最も多くの時間と資金が必要になると指摘。SPIBER BIOFOUNDRYを通じて、製品化までの時間を短縮したい考えを示している。
※本記事は、プレスリリース①・②をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Spiber
















































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