代替プロテイン

イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが約184億円を調達

 

アメリカ企業イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが1億7000万ドル(約184億円)を調達した。

この調達により、世界で最初に販売された培養肉ブランドGOOD Meatイート・ジャストの子会社となった。イート・ジャストは今年3月に約219億円を調達している。

このニュースとあわせ、シンガポールのJWマリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチにある広東料理レストラン「Madame Fan」が、動物肉を培養肉に完全に置き換えることが発表された。

(時間指定があるにせよ)レストランが動物肉を培養肉に置き換えるのは世界初となり、イート・ジャストにとって、培養肉の販売許可、デリバリーに続く3つ目の快挙といえる。

世界初!シンガポールレストランが動物肉を培養肉に置きかえる

世界で初めて発売されたイート・ジャストの培養肉 出典:イート・ジャスト

イート・ジャストは培養肉の「大衆化」において、世界で最初に快挙を成し遂げたスタートアップ企業。

昨年12月にシンガポールで培養肉の販売許可を世界に先駆けて取得、レストラン「1880」で培養肉を販売した。この春には、フードパンダと提携して、培養鶏肉を使った弁当のデリバリーも実施している。

今回のプレスリリースでは、GOOD Meatの培養肉を取り扱う新たなレストランも発表された。

JWマリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチの有名な広東料理レストラン「Madame Fan」は、1日の決められた時間帯、動物肉を培養肉で完全に置き換えることを発表。

5月20日からスタートし、週に1回、宅配料理に使用される動物肉が培養肉に置き換えられる。

出典:GOOD Meat、JW Marriott Hotel Singapore South Beach

JWマリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチの決定は、大手経営コンサルティング会社が今年2月に実施した、消費者とレストランの好みに関する調査結果を裏付けるものとなる。

これによると、調査対象の消費者(2522名)の3分の2が、動物肉を培養肉に置き換えることを受け入れると回答、レストラン経営者(103名)の80%以上が、今後10年間ですべての動物肉を培養肉に置き換えることを想定していると回答した。

出典:GOOD Meat

プレスリリースによると、GOOD Meatはシンガポールでの培養肉のニーズに応え、アメリカ市場参入に向けた準備のために、この数ヵ月、チーム、技術、製造インフラの強化に注力してきた。

同社は数百万ドル規模の設備投資により、北アメリカとアジアにおける生産の早期スケールアップを目指す。

このことから、GOOD Meatはシンガポールの次の市場としてアメリカを想定していることがうかがえる。

シンガポールの次に培養肉を承認する国は?

出典:GOOD Meat

これまでに培養肉が消費者に販売されたのはシンガポールのみ販売許可を取得したのも、アメリカのイート・ジャスト(GOOD Meat)のみとなる。

一方で、世界の培養肉企業も「第2」の販売許可取得に向けて動き出している。

培養肉業界は全体的に、アメリカのスタートアップ企業が牽引している印象が強い。

BlueNaluは今年後半にアメリカで培養魚をテスト販売する予定。

培養肉の老舗企業UPSIDE Foods(前メンフィス・ミーツ)は許認可がおりれば、年内にアメリカで培養鶏肉を販売することを先日発表した。

アメリカ発の培養脂肪Mission Barns、ハイブリッド肉のNew Age Meats、高級培養肉のOrbillion Bio、培養ロブスターのCultured Decadenceなど今年になってから資金調達が続いている。

Josh Tetrick氏 出典:イート・ジャスト

ヨーロッパに目を向けると、培養肉パイオニアであるモサミートは、最初の市場としてヨーロッパ、シンガポールに言及

ヨーロッパ発の培養魚Bluu Biosciences、培養肉のMeatable、誕生して間もないMirai Foods、培養脂肪のHoxton Farmsなども今年になってから資金調達を実施している。

イスラエルは市場規模ではアメリカ、ヨーロッパには及ばないものの、シンガポールのように国をあげて培養肉の促進に力をいれている

現に、ネタニヤフ首相は昨年、世界の指導者として初めて培養肉を試食している。同首相が試食したのはイスラエル企業アレフ・ファームズの培養肉。

出典:GOOD Meat

アレフ・ファームズは来年アジアで培養肉を販売する予定だ。

このほか、世界で最初に米国上場を果たした培養肉企業がイスラエルのMeaTechであることも注目に値する。

イスラエルFuture Meatは2022年にアメリカでの販売を目指しており、アメリカ企業のほかにイスラエル企業もアメリカ市場に入ってくる可能性が高い。

日本では、インテグリカルチャーが年内に、細胞培養によるフォアグラを高級レストランでテスト販売する予定。同社は2025年までにステーキ肉の開発も目指している。

 

参考記事

GOOD Meat, a Division of Eat Just, Inc., Secures $170 Million to Scale Meat Without Slaughter as Demand Grows

Eat Just’s GOOD Meat Raises $170M, Brings Its Cultivated Meat to More Restaurants

関連記事

アイキャッチ画像の出典:GOOD Meat

 

関連記事

  1. 米The Live Green Co、精密発酵によるヒト母乳脂肪…
  2. フードロス削減×栄養インスタント食品、イスラエル企業Aninaが…
  3. Juicy Marblesが植物由来の骨付きリブ肉の開発に成功、…
  4. 農研機構の生研支援センター、細胞性食品に公的支援|SBIR支援で…
  5. タバコ植物で培養肉のコスト削減を目指すBioBetterが約14…
  6. ミツバチを使わない「本物のハチミツ」を開発する米MeliBio
  7. ダノンが精密発酵企業Imagindairyに出資、細胞農業企業で…
  8. オランダの培養肉企業Meatableが約51億円を調達、来年にシ…

おすすめ記事

マレーシアの培養肉企業Cell AgriTechが2024年末までの工場開設を発表

マレーシア初の培養肉企業Cell AgriTechは、マレーシア、ペナンに培養肉…

食べられるコーヒーカップを開発したCupffeeが約2.6億円を調達

コーヒーとともに食べられるカップを開発したブルガリア企業Cupffeeは、プレシ…

【現地レポ】Perfect Dayの精密発酵乳タンパク質を使用したミルクを試食@シンガポール|精密発酵ミルクの現在地を確認

精密発酵技術で生成された食品がアメリカ、シンガポールなどで販売されている。…

会員権をNFTにした世界初のレストラン「Flyfish Club」、2023年ニューヨークにオープン

VCRグループが先月、世界初のNFTレストラン「Flyfish Club」を来年…

「ニッポンの魚ビジネスEXPO 2025」2月18日開催|業界の枠を超え、魚ビジネスの可能性を広げる

本記事は、Foovoがメディアスポンサーを務める「魚ビジネスEXPO 2025」の紹介記事です。…

食肉生産者を培養肉生産者に変えるドイツ企業Innocent Meatの「Clean meat as a service」

培養肉はクリーンミート、細胞培養肉とも言われ、動物を殺さずに食肉を生産する新たな…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/24 16:17時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/25 02:57時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/25 06:30時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/24 22:19時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/24 14:18時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/25 01:36時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP