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味の素がイスラエルの培養肉企業スーパーミートに出資、培養肉の商用化を支援

 

味の素は9日、コーポレートベンチャーキャピタルを通じて培養肉の開発・製造を手掛けるイスラエルの培養肉企業SuperMeat(スーパーミート)に出資したことを発表した

スーパーミートが持つ培養肉の開発技術・知見と、味の素独自のバイオ医療や発酵に関する技術、呈味や食感などおいしさ設計技術を組み合わせ、培養肉の商用化を目指す。

国内企業の海外細胞農業企業への出資・パートナーシップとしては、住友商事と米ブルーナル(培養魚)、明治ホールディングスとCalifornia Cultured(培養チョコレート)、三菱商事とアレフ・ファームズ(培養肉)、モサミート(培養肉)、ブルーナル(培養魚)、フード&ライフカンパニーズとブルーナル(培養魚)などに続くものとなる。

おいしさの設計技術に強みを持つ味の素の参入は、国内の培養肉業界にとって強力な追い風となる。

市販化を実現した培養肉企業は1社のみ

出典:SuperMeat

培養肉市場は2025年の20億ドルから、2030年には250億ドルに成長すると予測される。世界人口の増加に伴う高まる食料ニーズ、畜産がもたらす環境負荷を背景に、新たな食として培養肉が注目されており、国内外で開発が進んでいる。

しかし、培養肉を開発・製造するスタートアップの多くは自社技術の実証実験の段階にあり、一部の企業が限定的な販売や、商業スケールの製造施設の建設・稼働の準備を行っているのが現状となる。

Upside Foods(旧メンフィスミーツ)など培養肉の先駆的企業は2021年の市販化を目指していたが、現在までに培養肉の市販化に成功した企業はアメリカのイート・ジャストに限られる。同社は2020年12月にシンガポールで培養肉を販売した

味の素、培養肉用培地の開発で協力

出典:SuperMeat

プレスリリースによると、味の素とスーパーミートの提携における重点は、培養肉に使用できる培地とその原料の開発となる。

培養肉の生産プロセスでは、細胞を成長させるためのサプリメントの役割を果たす培地がコストの大部分を占める。培養肉の需要を満たし、従来の動物肉とのコスト競争力を高めるためには、食品グレードの成長因子の導入など、成長因子の供給においてさらなる改善が求められる。

今回の提携は、味の素の2020年から2025年の中期経営計画の一環となり、味の素が20年以上にわたって開発した無血清培地のノウハを活用すると考えられる。

味の素は、食料確保や環境負荷低減につながる解決策の一つである培養肉産業に対し、アミノ酸技術を原点として再生医療・食品分野で培った成長因子、アミノ酸などの技術・製品を活用し、培養肉企業と協業して、生産者から消費者までの持続可能なフードシステムの構築を目指す。

世界初の培養肉試食レストランをオープンしたイスラエル企業

出典:SuperMeat

スーパーミートは培養肉企業のなかでも2015年設立と早期に立ち上がったスタートアップ企業。

同社は世界で初めて、培養肉工場の隣に培養肉試食に特化したレストランTheChickenを2020年にオープンするなど、将来的な商用化を見据えた独自の取り組みを展開してきた。

同社独自の技術を活用することで、「筋肉、脂肪、結合組織を、効率的で美味しくスケーラブルな組織様構造にまとめて成長させることができ、足場や担体を使用せずに、肉製品と同じ栄養特性と官能特性を生み出す」ことが可能となる。

今年1月には、レストランTheChickenで培養肉のダブルブラインドテスト(シェフも審査員もどちらが培養肉か知らされていないテスト)を実施。審査員が本物の肉だと選んだものは、スーパーミートが製造した培養肉だった。

味の素は今後、スーパーミートが2年以内に予定している培養肉の商用化に向けた課題解決を支援し、培養肉に関連した新しい技術・素材の開発を進めていく。

食料安全保障としての培養肉

出典:SuperMeat

2021年の培養肉企業に対する出資額は過去最高の14億ドルとなった。これは2020年の4億ドルの3倍以上となる。

国内ではインテグリカルチャーが1月、リアルテックファンド、Future Food Fund、食の未来ファンド、Beyond Next Venturesなどから7億8000万円の出資を受けた。同社は2023年3月までを目標に培養フォアグラの量産化・上市を目指している。

培養フォアグラではフランスのGourmeyも同じスケジュールでの上市を目指しており、インテグリカルチャーが世界で最初に培養フォアグラの上市を実現するか注目される。

世界で最初に培養肉にGoサインを出したシンガポールの食料自給率は先進国で最低基準にある。日本の食料自給率は37%(2018年時)とシンガポールより高いものの、輸入停止による食料供給断絶リスクも考えるならば、食料政策の一層の整備が求められる

限られた資源で効率的に生産できる培養肉は、有望な食料政策となる。「食の巨人」味の素の参入は、国内食品業界の培養肉に対する関心の高まりを表している。

 

参考記事

味の素(株)、培養肉スタートアップのスーパーミート社に出資

Leading Food and Biotechnology Company Ajinomoto Partners with Cultivated Meat Company SuperMeat, Anticipates Bright Future in Cellular Agriculture

 

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アイキャッチ画像はSupermeatの画像と各社ロゴをもとに作成

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