出典:VTT
VTTフィンランド技術研究センターは、牧草を反すう動物の飼料だけでなく、食品・飼料・素材など高付加価値製品へと加工する研究を進めている。
この取り組みは2025年5月に始動した、VTTが主導する欧州研究開発プロジェクト「PRIMARY」の一環であり、牧草バイオマスにタンパク質、炭水化物、ミネラル、ビタミンなどの成分が含まれることに注目し、食品、飼料、素材に加工するグリーンバイオリファイナリーを目指すものだ。
牧草を食品向けタンパク質、微生物タンパク質の発酵原料に

出典:VTT
PRIMARYプロジェクトでは、食品分野で2つの取り組みを進めている。
1つが、牧草からタンパク質原料を得る取り組みだ。VTTによると、豚や鶏などの単胃動物は、繊維質の細胞壁に結合したタンパク質を消化できないため、十分に利用できない。
牧草の汁を機械的に圧搾してタンパク質を沈殿させることで、高濃度なタンパク質が得られる。この原料は単胃動物向け飼料や、食品原料として利用できる可能性があるが、EUで食品用に販売するには新規食品の認可が必要になるという。
もう1つの食品分野での方向性が、牧草を微生物タンパク質の原料にする取り組みだ。
VTTは、牧草の全バイオマス、または牧草汁を搾った後の繊維残さを、微生物バイオマス生産の原料として使う研究を進めている。牧草の細胞壁構造を水蒸気爆砕でゆるめ、酵素処理で糖を放出させた後、微生物の発酵に利用する流れとなる。
VTTによると、乾燥牧草、サイレージ化した牧草、圧搾後の牧草のいずれからも、発酵で利用できる糖が有望な量で得られたという。現在は選定した微生物がこれらの原料でどの程度増殖するかを比較しており、その結果に基づき、最適な微生物を選び、VTTの発酵施設でパイロット試験を実施する予定だ。
今回の研究では、チモシーとアカクローバーを対象としている。新鮮な牧草は水分含量が高く、約80%が水で、収穫後数時間で傷み始める。このため、食品や飼料の原料として使うには、収穫後すぐの処理や保存方法が重要になる。
食品以外では、VTTは牧草の繊維を断熱材や包装材に利用する試作も進めている。チモシーやアカクローバーを使い、断熱材、包装材、防風板を試作しており、一部に木材繊維を混ぜたものの、牧草由来材料を半分以上含む配合でも良好な技術特性を示したという。
牧草からタンパク質を加工する取り組みはPRIMARYプロジェクトの1つであり、ほかにも、温室栽培で生じる残渣をアップサイクルしてマイコプロテインを開発する取り組みも進められている。
欧州で広がる牧草タンパク質開発

出典:Grassa
牧草由来タンパク質の取り組みは、欧州で広がりつつある。
オランダのGrassaは今年3月、牧草タンパク質生産技術の開発に向けて360万ユーロ(約6億6,000万円)を調達した。Grassaは輸入大豆の持続可能な代替品として、牧草からタンパク質を抽出している。同社は25~50の酪農家と協力し、牛乳生産量に影響を及ぼすことなく牧草からタンパク質の50%抽出の実証に取り組んでいる。
デンマークでは、コペンハーゲン大学がHQProteinプロジェクトで、マメ科牧草タンパク質を高機能・高栄養価の食品原料にする研究を進めている。同プロジェクトでは、植物性アイスクリームへの応用を想定し、食用タンパク質の抽出、機能性・栄養特性の確認、商品開発、消費者調査による商用化の可能性の検証を行う。
アイルランドでも、マンスター工科大学がGrass4Valueプロジェクトを進めている。アイルランド農業・食品・海洋省から約300万ユーロ(約5億5,000万円)の資金を受け、牧草やマメ科植物を高付加価値製品に変換するプロセスを開発する。
同プロジェクトでは、輸入大豆の代替として飼料向けの牧草タンパク質を生産し、子牛・雌羊・豚で試験するほか、グリーンバイオリファイナリーの下流処理や精密発酵を含む新技術を進め、人向け食品に使える高付加価値のタンパク質・原料の開発を目指している。
牧草はこれまで、主に牛など反すう動物を通じて間接的に人の食に関わってきた。VTTの研究は、牧草を直接タンパク質原料にしたり、発酵原料として微生物タンパク質生産につなげたりするもので、牧草を活用した新たな取り組みとして注目される。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:VTT






















































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