代替プロテイン

GFIレポートから読む2025年の植物性食品|植物肉は実現可能性を示すも、競争力確立はなお途上

出典:Coletta/Chunk Foods Instagram

代替タンパク質の普及促進を行う非営利シンクタンクのGood Food InstituteGFI)が、「2026 State of the Industry report-Plant-based meat, seafood, eggs, dairy, and ingredients」を発行した。

本記事では、同レポートの内容に基づいて、2025年のプラントベース分野の動向をまとめた。文章中で示す括弧はレポートの該当部分を示している。

GFIによると、2025年の植物由来の肉・シーフード・ミルク・ヨーグルト・アイスクリーム・チーズの世界小売売上は推定289億ドル(約4兆6,000億円)となり、2024年から3%増加した(p6)。

植物由来の肉・魚に限ると、世界小売売上は推定66億ドル(約1兆円)(p6)であり、2015年の22億ドルから10年で3倍に拡大した(p4)。

GFIは、2025年は企業の買収・統合・撤退が目立つ一方、欧州を中心に公的・多国間機関が投資や商用化を後押ししたとしている。EUでは表示規制が進められる一方で、中国、デンマーク、ドイツ、ポルトガル、スペインなどでは、植物由来食品を国家戦略の中で重視する動きがみられた(p4)。

一方で、GFIは、植物肉について、過去10年で「実現可能性」は示したものの、本格的に競争できる水準にはまだ到達していないとしている。初期世代の製品は、植物タンパク質で肉の多くの特徴を再現できることを示した一方、主流となるには味と価格などのギャップはなお残る(p4)。

GFIは、従来の食肉生産と比べれば、植物肉の分野は「まだ根を張り始めた」段階にあるとし、味や価格の差を縮め、消費者にとって説得力のある価値提案を示す余地があるとしている。(p4

大手企業の動き

出典:Silk/Danone

GFIは、2025年には複数のプラントベース企業が、肉・卵・乳製品・主要原料にとどまらず、ホールフード型の植物性食品、タンパク質強化食品、そのまま飲める飲料などへポートフォリオを広げたと報告している。

隣接カテゴリーに展開したりすることで、短期的な需要を取り込み、収益を安定させ、投資家への訴求力を高める狙いがあるという(p30)。

GFIは、大手食品企業による動きとして、イギリスのIKEAカフェテリアでの英THISの植物性ポークソーセージの導入、インドのマクドナルドによる「Protein Plus」の展開、カナダのマクドナルドでの植物性パティ「McVeggie」の導入、Kraft HeinzNotCoの合弁会社による植物由来マカロニチーズカップ、Danoneによる高タンパクの植物性ミルク「Silk Protein」の発売、ペプシコNotCoによる植物性マヨネーズとナゲットのチリでの発売などを挙げている(p14)。

スタートアップの動き

出典:Nxtfood

施設開設の面でも、スタートアップは初期段階のイノベーションからスケールアップに動いている。GFIは、Plantible Foodsのウキクサ由来タンパク質の商用施設、Yumgoの植物性卵の新施設、植物性チーズ企業Quevanaの大規模なカシューチーズ工場、Offbeastの植物性ステーキ製造工場などを挙げている(p9〜10)。

以下はFoovoが2025年に取り上げたプラントベース企業ニュースの一部となる(リンク先はFoovo記事)。

  • Nxtfood(フランス):植物性代替肉ブランド「ACCRO」を展開するNxtfoodが、シリーズBで約85億円を調達。
  • UMAMI UNITED JAPAN(日本):植物性代替卵を開発するUMAMI UNITED JAPANが、プレシリーズAで3億1,000万円を調達。
  • Plantible Foods(米国):ウキクサ由来ルビスコ「Rubi Protein」の商用生産施設を本格稼働。
  • Fabumin(イスラエル):豆類加工で生じる副産物「アクアファバ」を活用し、代替卵白原料を開発。
  • Kinish(日本):植物分子農業でイネ由来カゼインを開発するKinishが、2月にシードラウンドで1億2,000万円を調達。8月には「The Rice Creamery」を都内スーパーとオンラインで販売開始
  • Aspyre Foods(米国・南アフリカ):ウキクサを使い、カゼインとルビスコの2成分を共抽出する植物分子農業プラットフォームを構築。
  • Fattastic Technologies(シンガポール):油脂構造化技術により植物油脂を用いた健康的な代替脂肪を開発。タイ味の素社と協業を開始。
  • Leaft Foods(ニュージーランド):葉由来のルビスコを配合した最初の消費者向けドリンク「Leaft Blade」の販売を開始。
  • Cano-ela(オランダ):菜種種子からタンパク質や炭水化物、微量栄養素を抽出。
  • INTAKE(韓国):国家プロジェクトで海藻由来の代替魚を開発。

投資と再編

出典:The Rice Creamery/Kinish

投資面では、数字だけを見ると前年から増加している。プラントベース企業に集まった2025年投資額は4億5000万ドル(約720億円)となり、2024年の3億4200万ドル(約540億円)を上回った(p6)。

ただし、GFIは投資環境が引き締まっていると分析しており、特にアメリカでは、植物肉の逆風が続き、小規模・新興ブランドにとって厳しい年になったとしている(p6)。

GFIは、2025年の大型投資は、すでに小売、外食、B2Bなどの既存チャネルで一定の売上を生み出している企業に向かったと分析。投資家が短期的な市場での実績を重視するなか、欧州拠点の企業は2025年に非上場企業が調達した資金の約3分の2を獲得した。一方で、アメリカを中心とする小規模・新興ブランドには厳しい環境が続いた(p30)。

目立ったのは、欧州における公的・多国間機関による投資だという。

GFIは、欧州の拠点を置くプラントベース企業への投資額は2億1,600万ドル(約346億円)で、4年連続で北米の1億8,100万ドル(約290億円)を上回ったと報告している(p34)。

欧州投資銀行(EIB)がEUのInvestEUプログラムの支援を受け、スペインのHeura Foodsに研究開発とスケールアップ投資を支援する2,000万ユーロ(約36億円)の融資を提供したことや、デンマークのMATR Foodsが、EIBからのデットファイナンスとデンマーク輸出投資基金の参加を含む形で4,000万ユーロ(約73億円)を調達した事例を挙げている(p34)。

一方で、再編も進んだ。GFIによると、2025年には少なくとも19社のプラントベース企業が買収・取得の対象となった。さらに、追加資金の確保に苦戦し、事業を一時停止または閉鎖した企業も複数あった(p7,30)。

GFIは、資本が拡張性のあるプラットフォームや差別化されたブランドに集まる一方、ユニットエコノミクスの改善や継続的な需要を示せない企業は、資産や知的財産の売却、事業終了に追い込まれるケースが増えていると指摘している(p6)。

技術面での進展

出典:Fattastic Technologies

技術面では、原料、加工、官能評価の各領域で前進があった。

GFIは、豆類・マメ科作物における植物由来タンパク質の育種研究が進み、消化性、機能性、風味を最適化することで、下流工程の複雑さとコストを下げられる可能性が示されたとしている(p7)。

製造技術では、高水分押出に関する研究も進んだ。韓国大学とマサチューセッツ大学アマースト校の共同研究では、高水分の植物肉製品において、塩溶液をインラインで注入することで繊維状ネットワークの形成と構造を向上できることが示された。また、植物性バーガーの内部構造や加熱時の変化を解析するため、時間領域核磁気共鳴を用いる研究も紹介されている(p7)。

GFIは、植物肉のプロセスバリデーションリスクを低減するには、共有データの構築が重要になっていると指摘している。2025年には、食品原料の比較可能な技術・機能データを含むオープンアクセス・データベースの構築を支援する欧州のCOST Actionも開始された(p53

各国の対応

出典:首相官邸

政策面では、各国の対応が二極化している。

GFIによると、中国政府は食品システムの多様化と、植物性食品を含む新たな食品資源の探索を継続的な優先事項として位置づけている(p8)。また、GFIはデンマークドイツポルトガルスペインなども国家的な食品戦略の中で植物性食品を重視していると整理している(p4)。日本でも植物性食品を含むフードテックが17の戦略分野の一つに指定された

一方、欧州では表示規制が逆風になっている。EUでは2026年3月、植物性食品、細胞性食品において、「meat」を含む31の関連用語の使用を禁じる暫定合意が発表された。GFIは、こうした表示制限がプラントベース食品の競争を難しくするとしている(p6,8)。

GFIは、2025年の植物肉について、風味、食感、栄養面を改善する科学的進展と製品イノベーションが続いた年だったと総括している(p8)。

一方で、資金調達環境が厳しくなるなか、企業の方向転換や統合も進み、ベンチャー主導の実験段階から、食品産業としてのスケールアップへ移る動きもみられた(p8)。

短期的な混乱はあるものの、タンパク質需要の増加、気候変動や土地利用への圧力、サプライチェーンの多様化の必要性を背景に、長期的な成長はなお見込まれているとしている(p8)。

 

本記事の内容は、GFIレポート「2026 State of the Industry report-Plant-based meat, seafood, eggs, dairy, and ingredients」の内容に基づいています。文章中で示す括弧はレポートの該当部分を示しています。

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アイキャッチ画像の出典:Coletta/Chunk Foods Instagram

 

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