オランダの培養肉企業モサミート(Mosa Meat)が今月、同社初となる公式試食会をオランダで開催した。
欧州では今年4月にオランダ企業のMeatableが欧州連合(EU)で初めて培養豚肉の試食会開催を実現した。培養牛脂を使用したパテの試食会ではモサミートがEU初となり、市場投入に向けた製品の完成度の確認、専門家からのフィードバックを得ることが可能になった。
モサミートが培養牛脂の公式試食会をEUで初めて開催
欧州では人向けの培養肉の販売はまだ認められていない(培養ペットフードはイギリスで今月認められた)。
オランダは2013年に世界に先駆けて培養肉を発表した先駆的な地域だが、培養肉の試食にも新規食品規制が適用されていたため、長い間、試食会を開催できなかった。
こうした状況を打開すべく、オランダを拠点とするモサミート・Meatableの二社はオランダ政府らと共に培養肉の試食を可能にするための行動規範を作成。オランダ政府は昨年、管理された条件下での培養肉の承認前試食を認めた。
モサミートは今回の試食会で、植物成分と培養牛脂をブレンドしたハイブリッドビーフパテを参加者に提供した。植物成分にブレンドする成分として、肉らしい風味、香り、口当たりに特に重要である培養牛脂の可能性を特に評価する狙いがあった。
オランダの畜産農家、食品開発者、業界関係者が試食会に参加し、「バーガーはジューシーで、肉汁があり、美味しかった」などのフィードバックが寄せられた。
同社CEO(最高経営責任者)のMaarten Bosch氏は、「当社の培養脂肪が製品の品質に非常に良い影響を与えることを確認できました。つまり、シンガポールで承認申請を提出した培養牛肉に加えて、プラントベース製品の食体験を向上させ、より多くの牛肉好きな人々をより早くに喜ばせることができるということです」と述べている。
6年間の開発の成果
今回の発表は、今年5月の約66億円の大型資金調達に続くニュースとなる。
モサミートは2018年から、培養牛肉に加え培養牛脂の開発にも取り組んできた。社内で培養脂肪の試食会を開催し、3年後の2021年には培養牛脂に使用する培地のコストダウンを発表した。
昨年1月にはウシ胎児血清(FBS)を使用せずに脂肪細胞を培養する無血清培地に関する論文を発表し、同社の無血清培地はFBSより分化能が優れているという研究成果が示された。
モサミートは現在、シンガポール食品庁(SFA)から培養牛肉の承認を待つ状態にあり、培養牛脂に関する承認申請の状況は不明だ。
「(培養牛脂は)より多くの牛肉好きな人々をより早くに喜ばせることができる」とのBosch氏のコメントから、すでに市場に流通しているプラントベース肉にブレンドする成分として、培養牛脂の上市を優先させていく可能性も考えられる。
動物油脂の再現を目指す企業
培養脂肪では、モサミートのように培養肉と並行して開発する企業と、特化して開発する企業にわかれる。特化企業の中には、培養脂肪のHoxton Farms、Cultimate Foods、培養魚脂肪のImpacFat、Upstream Foodsなどがある。
動物油脂を再現する技術として細胞培養、精密発酵が使用されるが、いずれにおいても販売認可を取得した企業はまだない。
精密発酵では最近、スウェーデンのMelt&MarbleがEU初の精密発酵出資プロジェクトであるEICアクセラレーターから資金提供の企業として採択されたり、オーストラリアのNourish Ingredientsがニュージーランドの乳業大手フォンテラと提携したりなど、新たな動きが確認されている。
★代替脂肪に関する企業をまとめたスライドはこちらのページからダウンロード可能。
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アイキャッチ画像の出典:Mosa Meat