出典:Eden Brew
精密発酵でカゼインを開発するオーストラリアのEden Brewは、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)が同社申請を正式に受理したことをリンクトインで発表した。
同社によれば、オーストラリア・ニュージーランドで精密発酵乳タンパク質の申請が提出されたのはこれが初。
申請したのはβ-カゼインで、「幅広い食品において機能性成分・栄養成分としての使用」を想定している。
同地域では2020年12月に、米インポッシブル・フーズが精密発酵で製造する大豆レグヘモグロビン(ヘム)について、FSANZから代替肉への使用を認可されている。同社ヘムを使用した代替肉製品はオーストラリア・ニュージーランドのレストラン・スーパーマーケットで展開されてきた。
精密発酵カゼインでは米New Culture、オーストリアのFermifyがアメリカでGRAS自己認証に到達したものの、上市はまだ実現していない。
Fermifyは今年シンガポールでも申請を実施したが、その後、解散し、清算手続きに入った。こうした状況の中で、オーストラリア・ニュージーランドにおいて、精密発酵カゼインを含む乳タンパク質の商用化に向けた当局の審査が、初めて本格的に動き出した形となる。
「カゼイン単離品」ではない乳タンパク質「BCPP1」

出典:Eden Brew
Eden Brewは、オーストラリア産業イノベーション科学省傘下のオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)、CSIRO のベンチャーキャピタルMain Sequence、大手乳業協同組合のNorco、そして元Woolworths 幹部のJim Fader氏により2021年に共同設立された。
Eden Brewは遺伝子組換えKomagataella phaffii由来のβ-カゼインタンパク質製品(BCPP1)を幅広い食品に使用するために、2025年10月15日にFSANZに申請書を提出し、11月25日に受理が公表された。
申請書サマリーによると、BCPP1はA2 β-カゼインのみで構成されるものではなく、実際には約25%がβ-カゼイン、残り約75%が発酵宿主である酵母由来の共精製タンパク質からなる複合的なタンパク質原料となる。Eden Brewは乳タンパク質とは組成は異なるとしつつも、製品全体としてのタンパク質品質が、PDCAAS評価により従来の乳由来β-カゼインと同等であることを示している。
そのため同社プロセスは、高純度にβ-カゼインだけを取り出す設計ではない可能性があるが、下流工程の詳細は現時点の公開資料からは不明である。
今後、2026年4月から5月半ばにかけて1回のパブリックコメントが行われ、当局の公表スケジュールでは、2026年11月中旬の承認が見込まれている。
このスケジュールは、過去の事例と照らしても一定の信頼性があると考えられる。
インポッシブル・フーズのケースでは、申請の公表(2019年8月)から承認(2020年12月)まで約1年4ヵ月を要したが、申請受理時点で当局が示した「2020年11月後半」という想定スケジュールと大きく乖離することはなかった。同様のスピード感をたどれば、Eden Brewについても、来年末ごろにオーストラリア・ニュージーランドで精密発酵カゼインが制度上認められる可能性が見えてくる。
同社は2023年10月にシリーズAラウンドで2,500万ドル(当時約37億円)を調達した。
オーストラリアにはカゼインを開発するChange Foods、カゼインのほかウシおよびヒトのラクトフェリンを開発するAll G、脂肪を開発し、アメリカでFEAM GRASを取得したNourish Ingredients、スキンケア用途からヒトラクトフェリン上市を目指すEclipse Ingredients、ホエイ・ラクトフェリンに取り組むDaisy Labなどの精密発酵スタートアップが登場している。
Eden Brewの動向は、同地域における精密発酵乳タンパク質の商用化の現実性を測るうえで重要な指標となりそうだ。
※本記事は、リンクトインの発表をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Eden Brew





















































