オランダの精密発酵企業Viviciが、精密発酵由来ホエイタンパク質についてGRAS自己認証ステータスを取得し、アメリカで販売可能になったことを発表した。
販売可能になった成分はホエイタンパク質の1種、β-ラクトグロブリン。
β-ラクトグロブリンではこれまでに、アメリカのパーフェクトデイ、イスラエルのRemilk、Imagindairyがアメリカで販売認可を取得している。欧州に拠点を置く企業のなかで、アメリカで精密発酵タンパク質で認可を取得したのはViviciが初となる。
先週、アメリカのNew Cultureが世界で初めて精密発酵カゼインでGRAS自己認証ステータスを発表、アメリカで精密発酵カゼインを販売できるようになった。
欧州の企業であるViviciがβ-ラクトグロブリンでGRAS自己認証を達成したことで今後、精密発酵でβ-ラクトグロブリンやカゼインを開発する欧州企業が、規制プロセスが確立したアメリカ進出を加速させるのは必須だろう。
Viviciは現在、公式サイトで食品メーカーからのサンプル注文を受け付けている。
欧州企業で初となる精密発酵タンパク質のGRAS自己認証
Viviciがこれまで認可を取得した企業と異なる点は、同社がニュージーランドの大手乳業メーカーフォンテラとオランダの大手化学メーカーDSMによって設立されていることだ。
フォンテラは、130国以上にブランドを展開する世界的な乳業メーカーであり、DSMは精密発酵の専門知識を有している。精密発酵の技術、乳製品の製造・販売網という強みを掛け合わせて設立されたViviciは、2022年末の設立からわずか1年強で、GRAS自己認証ステータス取得まで到達した。
昨年10月にはβ-ラクトグロブリンのスケールアップに成功し、当時の発表によると今年さらなるスケールアップを予定している。
Viviciは想定クライアントとして、持続可能で倫理的に製造された機能性タンパク質を自社製品に使用したいと望む食品・飲料メーカーを挙げている。Green queenの報道によると、Viviciは今年後半に精密発酵ホエイを使用した最初の製品をアメリカで発売する予定だという。
同社は現在、GRAS認証に向けてFDAに書類の提出をする段階にある。FDAが提出された書類に対し、「質問なし」のレターを発行すると、同社のβ-ラクトグロブリンに関する詳細な情報がGRAS Inventoryに公開される。今後数ヵ月以内にシンガポール・欧州でも申請を予定している。
精密発酵の社会普及に不可欠な大手食品会社の導入
培養肉と異なり、製品の成分として使用される精密発酵タンパク質は、消費者にもメーカーにも実際の普及状況がわかりにくい。この点で、社会普及の促進剤となるのは、製造コストの削減ももちろんだが、大手食品メーカーが導入するかどうかによるところが大きい。
先日、ネスレが精密発酵ホエイを使用したプロテインパウダー製品を発売した。ネスレは2022年12月に最初の試験販売を実施しており、今回が2回目。精密発酵製品が市場シェアを獲得するか否かは、ネスレなど大手企業の本格導入に大きく左右されるため、フォンテラの技術・ネットワークを有するViviciはこの点で有利な立場にあるといえる。
フォンテラの主要市場はオセアニア、中国、インドネシア、マレーシアだが、同社製品はアメリカでも流通している。Fonterra AmericasのブランドにはAnchor Dairy、Anchor Food Professionals、B2BソリューションのNZMPがあり、これらのブランドに使用されて市場へ流通していくかもしれない。
Viviciは昨年11月にバイオテック企業のギンコバイオワークスと乳タンパク質の範囲拡大で提携しているため、今後はβ-ラクトグロブリンを超えて、他のタンパク質にも着手していくことが予想される。
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アイキャッチ画像の出典:Vivici