代替プロテイン

ニューヨーク州、GRAS自己認証成分の報告を義務付ける法案可決|連邦に先行する州規制の動き

法案の主要提案者の一人、Brian Kavanagh州上院議員 出典:ニューヨーク州上院

ニューヨーク州議会は4月21日、企業がGRAS(Generally Recognized as Safe/一般的に安全と認められる)と判断し、アメリカ食品医薬品局(FDA)に通知していない食品成分について、州当局に安全性を示す根拠の提出を義務付ける法案を可決した

可決されたのは、「S1239F:Food Safety and Chemical Disclosure Act(食品安全・化学物質開示法案)」。

法案が成立すると、FDAに通知していないGRAS自己認証の成分については、州当局への報告とデータベースでの公開なしに、ニューヨーク州で販売ができなくなる。

法案は3月23日に州上院を60対0で通過し、4月21日に州下院を106対32で通過した。今後はKathy Hochul州知事の承認を待つ段階となる。承認された場合、原則として1年後に施行される。

報告された情報は、州のウェブサイト上でデータベースとして公開される。これにより、これまでFDAに通知されないまま流通してきたGRAS自己認証の成分についても、安全性判断の根拠が外部から確認できるようになる。

同法案の主要提案者であるAnna Kelles州下院議員は、「企業活動の規制に消極的な連邦政府と、限られたリソースの中で業界の自主規制に大きく依存しているFDAを考えたとき、公衆衛生を守る責任は各州に委ねられています」とプレスリリースで述べた。

GRAS自己認証で連邦に先行する州規制の動き

ロバート・ケネディ・ジュニア米保健福祉長官(出典:米保健福祉省)

この動きは、GRAS自己認証の見直しをめぐり、州が連邦に先行したものとなる。

米保健福祉省(HHS)のロバート・ケネディ・ジュニア長官は2025年3月、FDAに対し、企業がFDAに通知せずに食品成分をGRASと判断するGRAS自己認証制度を「抜け穴」だとし、廃止に向け検討するよう指示していた

昨年9月にはGRAS通知の提出を義務づける規則案(0910-AJ02)が統一アジェンダに掲載された。この規則案は現在も審査中であり、最終決定されると、新規食品の展開を目指す企業はFDAへのGRAS通知が義務付けられることとなる。

ただし、ニューヨーク州の法案は、独立して所有・運営される従業員100人以下の中小企業については免除され、州当局への報告義務の対象外とされている(下記画像)。

精密発酵分野では、パーフェクトデイThe EVERY Company(旧称Clara Foods)などが、それぞれ約320名約140名(2026年4月24日時点)と100名を超える従業員を有するが、両社ともFDAから「質問なし」レターを受領しており、そうした原料では対象にならないと考えられる。

一方、FDAに通知せずGRAS自己認証で販売している原料については、企業規模によって影響を受ける可能性がある。

同法案は、着色料の赤色3号に加え、臭素酸カリウムプロピルパラベンについても、食品添加物または食品着色料としての使用を禁止している。赤色3号については、FDAは2025年1月に使用認可を取り消している

州や連邦のルール改定に向けた動きは、すでにFDAから「質問なし」レターを受領している企業に影響を及ばさない一方で、これまでGRAS自己認証により販売してきた企業には負担となりうる。

ただし、精密発酵分野についていえば、多くの精密発酵スタートアップはGRAS自己認証にとどまらず、FDAへのGRAS通知ルートを選択してきた

FDAから「質問なし」レターを受領できれば、それが安全性のお墨付きとなり、パートナー企業や消費者からの信頼獲得につながるためだ。フィンランドのOnego Bioも以前、GRAS通知を行う理由として「大手食品メーカーや消費財メーカーが最終的にこれを要求するため」だとFoovo説明していた

今回のニューヨーク州法案が成立すれば、101人以上の従業員を有する企業にとっては、市場投入までに要する期間が長くなり、負担となりうる。

まずはGRAS自己認証で市場の反応を確かめたいと考えていた企業にとっては、州への安全性根拠の報告、データベースでの公開という追加対応が必要になり、戦略変更を強いられる可能性があるだろう。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

フードテックの国内外ニュースを週1回まとめてお届けしております。
メールマガジン登録はこちらから

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:出典:ニューヨーク州上院

 

関連記事

  1. 植物の葉から食用タンパク質を開発するLeaft Foodsが約1…
  2. ドイツのProteinDistillery、ビール酵母由来タンパ…
  3. モサミートがEUから助成金を授与、Nutrecoと共同で培地コス…
  4. ダイバースファーム、細胞性鶏肉技術の海外B2Bへ|ネットモールド…
  5. 米MeliBioの蜜蜂フリーなハチミツ、2023年始めに欧州市場…
  6. ネスレがヴィーガンキットカットの販売を欧州で開始!
  7. オランダのFarmless、約7.5億円を調達し農地不要のタンパ…
  8. 【世界初】米Mission Barnsの培養脂肪、FDAの安全性…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

米パーフェクトデイ、精密発酵による甘味タンパク質開発で市場参入か – FDAにGRAS通知済み【Foovo独自】

精密発酵で乳タンパク質を開発した代表企業であるパーフェクトデイ(Perfect …

ISOが植物由来食品の表示規格「ISO 8700:2025」を発表—精密発酵・植物分子農業も含む広義の植物由来をどう見るか

出典:Impact FoodISO(国際標準化機構)は先月、植物由来食品に関する表示規格「ISO…

培養サーモンの米WildTypeが培養シーフード業界史上最大の約114億円を調達

細胞培養による培養サーモンを開発するアメリカ企業WildType(ワイルドタイプ…

自律型サービスロボットを開発したBear RoboticsがシリーズBで約100億円を調達

接客ロボットと人工知能を活用したソリューション領域での先駆者であるBear Ro…

インポッシブルフーズが香港・シンガポールの食料品店で販売を開始、アジア進出を加速

インポッシブルフーズの植物性代替肉がアジアのスーパーに登場した。19日、香港とシンガポールの…

Celleste Bio、植物細胞培養によるココアバターで2027年末~2028年初頭の上市へ【創業者インタビュー】

Hanne Volpin氏 Foovo(佐藤あゆみ)撮影ココアバターに注力するイスラエルの細胞性…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovoセミナー開催のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP