代替プロテイン

ドイツのBLUU、魚細胞の1,000L培養に成功|細胞性シーフードでパーソナルケアを先行

Jaco van der Merwe氏(左/Cultivate at Scale)とSebastian Rakers博士(右/BLUU)
出典:BLUU/Cultivated at Scale

細胞性シーフードに取り組むドイツのBLUUは4月13日、モサミートから昨年スピンアウトされたCultivate at Scaleと共同で、1,000リットルのバイオリアクターで魚細胞の生産に成功したと発表した。

両社は、細胞由来の海洋原料を生産する欧州初の工業プラットフォームを構築するとしており、1,000Lでの魚細胞生産は世界初だという。

プレスリリースによると、最初の用途としてパーソナルケア分野を掲げている。

BLUUはタイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)とニジマスの細胞培養技術を、Cultivate at Scaleは大型バイオリアクターでスケールアップするためのインフラとノウハウを提供する。

BLUUの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)であるSebastian Rakers博士は、今回の1,000リットル培養の達成について「原料を生産できるだけでなく、実際の生産環境で細胞が安定的に生産できることが示されました」とプレスリリースで述べた。

食品開発からパーソナルケア先行へ、BLUUの戦略シフト

出典:BLUU/Cultivated at Scale

BLUUは欧州初の細胞性シーフード企業として2020年に設立された。現在は、12ヵ国からの28名の従業員を有する企業へと成長している。

2022年には魚の細胞を培養した初の試作品を発表。2024年4月には、ドイツ、ハンブルクに欧州初となる細胞性魚肉のパイロット工場を開設。初期段階では65リットルで、長期的に2,000リットルへの拡張を予定している。

2025年7月には、香辛料・機能性素材メーカーのドイツ企業VAN HEESと提携し、ハイブリッド製品用のカスタマイズされたソリューションの開発に焦点をあてると発表した。

その一方で、2025年後半にはパーソナルケア・健康分野へシフトする動きが確認された

現在の公式サイトでも、事業領域をパーソナルケア健康食品の3つに分類し、食品は「長期的な機会」と位置づける一方、パーソナルケアは「先行する市場」として打ち出している。

今回の1,000L発表でも初期用途はパーソナルケアと明記されており、規制の障壁がある食品よりも、まず高付加価値な化粧品・海洋由来原料で市場投入を進める戦略を明確に打ち出した形だ。

食品と非食品の両面で進む細胞性食品の事業化

インテグリカルチャーのアヒル細胞を培養した試作品とそれを用いたラザニア Foovo(佐藤あゆみ)撮影

こうした動きは、他の細胞性食品企業でもみられる。

化粧品で収益化を実現しているインテグリカルチャーや、化粧品原料として培養上清の上市を計画するImpacFatなど、食品以外の用途を先行させる事例はすでに出てきている。

一方で、食品用途でも進展はみられる。

国内ではオルガノイドファームが今年、国内最大級とされる200リットルでの牛筋肉細胞の培養に成功した。中国のJoes Future Foodは昨年12月、2,000リットルのバイオリアクターで細胞性豚肉の試験生産を完了したと発表した。

海外では米WildTypeが昨年5月に細胞性サーモンの販売認可を取得し、4箇所のレストランで提供を継続している。フランスのPARIMAはシンガポールで鶏・アヒルの2種の認可を取得し、チェコのMeweryは細胞性豚肉で1リットルあたり300gの収量を達成した。

さらに、細胞性マグロの米BlueNaluもリンクトインで今月、「細胞性マグロがまもなく登場します」と投稿をしており、細胞性シーフードを含む細胞性食品分野では、食品とパーソナルケアの両面から事業化が進みつつある。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

フードテックの国内外ニュースを週1回まとめてお届けしております。
メールマガジン登録はこちらから

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:BLUU/Cultivated at Scale

 

関連記事

  1. Vowの培養ウズラ、ついに地元オーストラリアでFSANZが承認|…
  2. Prime Roots、米国スーパーのデリ売り場で存在感|小売店…
  3. 米New Cultureが精密発酵カゼインによるモッツァレラ試食…
  4. 黄身・白身・殻を再現した植物性代替卵を開発するNeggstが約6…
  5. 熟成で味を強化、培養条件で“味”をデザイン──東大、「狙った味」…
  6. 安価な成長因子を開発するカナダのFuture Fieldsが約2…
  7. 培養羊肉のMagic Valleyがパイロット施設へ拡張、年産1…
  8. 米イート・ジャストがシンガポール最大の植物性タンパク質工場の建設…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

ソーラーフーズがフィンランドのNasdaq First North Growth Marketに上場

フィンランドのソーラーフーズ(Solar Foods)は今月10日、フィンランド…

微生物でタンパク質を作るNature’s Fyndが約46億円を資金調達、2021年に製品化へ

このニュースのポイント●Nature’s Fyn…

米Friends & Family Pet Food、シンガポールで培養ペットフードの認可を取得

Joshua Errett氏 出典:Friends & Family Pet Food米…

欧州の植物由来食品市場、5.1%成長するも、代替肉・代替魚の浸透に課題

Foovo(佐藤)撮影 2024年10月、オランダ・ハーレムのAlbert Heijnにて欧州の…

微生物発酵CDMOのスイス企業Planetaryがコニカミノルタと提携、発酵タンパク質の生産性向上・コスト削減を目指す

スイスに拠点を置くバイオマス発酵・精密発酵のCDMO企業Planetaryは今月…

ビールの醸造で発生する廃棄大麦をアップサイクルするReGrainedとは

アメリカ、デラウェア州を拠点とするReGrainedは、ビールの醸造で発生する大…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

細胞性食品(細胞培養食品)レポート・予約注文開始

最新記事

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP