代替プロテイン

消費者庁が細胞性食品のガイドライン骨子案提示、インテグリカルチャー黒字化、培養肉展示も全国へ|国内の細胞農業が新局面

3Dバイオプリント技術で生成された霜降り培養肉 Foovo(佐藤あゆみ)撮影

国内の細胞性食品をめぐり、制度整備、黒字化、発信活動が同時に動き始めた。

消費者庁の食品衛生基準審議会新開発食品調査部会(以下、調査部会)では今月、細胞性食品のガイドライン骨子案が提示され、民間側ではインテグリカルチャーが2025年9月期の単年度黒字化を発表した。

研究側でも大阪大学がクラウドファンディングで目標額を大幅に上回る募集を達成し、培養肉の全国展示に向けて動き出した。

制度整備・黒字化・理解醸成の動きが同時進行

Foovo(佐藤あゆみ)撮影

2月5日に開催された調査部会では、「細胞培養食品(仮称)」に関するガイドライン骨子案が提示され、何が求められるのか、大まかな設計図が見えた形となる。骨子案では「製造方法に変更があった場合」が記載すべき項目として明記された。

JACA代表理事の吉富愛望アビガイル氏はこれについて、「ガイドラインが“初回評価”だけでなく、審査中や審査後に製品の使用が変更された場合の対応を予め入れていることは、産業側・行政側双方にとって重要な整理」だとリンクトインの投稿で述べ、評価している。

民間側では、細胞農業のインフラと製品事業を進めるインテグリカルチャーが2月9日、2025年9月期決算で単年度黒字化を達成したと発表した。自社開発製品を展開する「細胞農業製品事業」と、業界の基盤となる「細胞農業インフラ事業」がそれぞれ売上の約5割を占めた。

製品事業では、同社独自の細胞培養上清液を用いた「セルアグ®コスメ」の採用事例が増加。インフラ事業では、血清代替成分を内製するCulNet実機、培地や酸素透過型バイオリアクターなどの技術が商用化フェーズに移行。昨年には、B2Bマーケットプレイス「勝手場」を通じて海外へスターターキットを販売した。同時に、地方創生を目指して地域の酒蔵との連携も進める。

羽生雄毅氏 出典:インテグリカルチャー

代表の羽生雄毅氏は「創業以来掲げてきた『みんなが使える細胞農業』が、単なる理想ではなく、ビジネスとして成立する段階に達したことを証明できました。今回の黒字化は、弊社の技術がラボを飛び出し、実際の産業として動き出した証です」とプレスリリースで述べている。

大阪大学が大阪・関西万博で展示した培養肉の全国展示を目指して実施したクラウドファンディングでは、目標金額500万円を大きく上回る989万6,000円(2月9日終了時点)を集めた。

2026年2月18日~4月13日まで、東京の日本科学未来館で3Dバイオプリント技術で生成された「家庭で作る霜降り肉」が展示される。大阪科学技術館では昨年12月から2月15日まで展示された。

東京以降も国内の科学館で巡回展示を開催し、最終的には47都道府県の科学館での展示を目指している。

日本型細胞農業モデルと制度の行方

3Dバイオプリント技術で生成された霜降り培養肉 出典:大阪大学

ガイドライン骨子案の提示、民間企業の黒字化達成、社会受容度向上に向けた展示活動が並行して動き始めたことは、国内の細胞性食品分野が次の段階に入りつつあることを示唆する。

海外ではGOOD Meat、Vow、Wildtypeなどが販売を継続する一方、昨年にはアメリカで大型工場を建設したイスラエル発のBeliever Meatsや、業界を牽引してきたMeatableなどが事業終了に至る例も相次いだ。

そうした中で、インテグリカルチャーの黒字化は異なる戦略の成功例として注目される。同社は最終製品の上市を急ぐのではなく、化粧品分野への横展開に加え、早期から業界横断型のコンソーシアムを設立し、そこで生まれた技術をインフラ事業として収益化するモデルを目指している。

日本の細胞農業の基盤づくりは着実に進みつつあるものの、ダイバースファームのように制度の整備を待つだけでは事業化が遅れかねないとの判断から、海外展開を模索する企業もある。国内に技術と意欲を持つプレイヤーが存在しても、制度の明確な枠組みがなければ資金が投入されにくい。そのためにも、骨子案を具体的なガイドラインへと速やかに落とし込む作業が求められる。

 

※本記事は、プレスリリース・公式資料をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

フードテックの国内外ニュースを週1回まとめてお届けしております。
メールマガジン登録はこちらから

 

関連記事

アイキャッチ画像はFoovo(佐藤)撮影

 

関連記事

  1. Vowの培養ウズラ肉、シンガポールのレストランがメニューに導入、…
  2. 精密発酵のコスト低下は段階的に起こる—GFI Adam Lema…
  3. オーストラリアのAll G Foods、植物肉ブランドを切り離し…
  4. イネで乳タンパク質を開発する日本発のKinish、1.2億円のシ…
  5. 牛を手放し「型破り」な転身を実現したイギリス農家と、それを支援す…
  6. フューチャーミートが世界で初めて培養羊肉を生産、年内に米生産施設…
  7. 牛乳の全成分を含んだ培養ミルクを開発するカナダ企業Opalia
  8. 牧草は食品原料になるか|フィンランドVTT、牧草由来タンパク質と…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

肉屋出身者が立ち上げたIvy Farm|2023年までに英国で培養ソーセージの市販化を目指す

イギリスの培養肉スタートアップIvy Farmは、2023年までにイギリスの小売…

米Checkerspot、微細藻類を活用したヒト乳脂肪類似体を開発

アメリカのバイオテック企業Checkerspotは微細藻類の発酵により、ヒト乳脂…

イリノイ州が精密発酵の推進に向けて、iFAB Tech Hubに約1030億円の出資を発表

アメリカ・イリノイ州は今月、精密発酵によるバイオものづくりを推進するiFAB T…

精密発酵で脂肪を開発するNourish Ingredientsが約39億円を調達

精密発酵で脂肪を開発するオーストラリア企業Nourish Ingredients…

【現地レポ】シンガポール企業Preferの豆不使用コーヒーを実食|おから、廃棄パン、ビール粕をアップサイクルした持続可能なコーヒー

コーヒーに伴う環境負荷をご存知だろうか。コーヒーは世界的に人気のドリンク…

スピルリナ由来の代替スモークサーモンを開発するSimpliiGood

2024年8月13日修正・追記スピルリナを活用して代替タンパク質を開発す…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

細胞性食品(細胞培養食品)レポート販売開始

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

PAGE TOP