このニュースのポイント
●香港に植物肉スタートアップTN Meatが誕生
●香港大手ECサイトで販売を開始
●中国人向けの植物性代替肉にフォーカス
●まもなくシードラウンドの資金調達を実施予定
●狙いは中国本土、シンガポール、マレーシア
植物由来の代替肉を支持する声は、今や世界的にもアジア市場でも高まる一方だ。
特に、新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の食の安全に対する意識、持続可能でない畜産に対する問題意識はこれまで以上に強くなっている。
アジアの植物肉代表格グリーンマンデーが実施した調査によると、香港の4人に1人が肉の摂取を減らし始めており、250万人の香港人のうち、34%がフレキシタリアンだという。
さらに、フードデリバリー大手Deliverooの統計によると、香港ではヴィーガン料理の注文が2倍になっている。
こうした植物肉に対する需要の高まりを受けて、2人の香港人はある問題に気づいた。
西欧料理に使える植物肉はたくさんあるのに、広東料理や中華料理向けの植物肉がまだ少ないことだ。
こうして香港に新たな代替肉スタートアップTN Meatが誕生した。
中国人の好みを満たす植物肉を開発するTN Meat
香港人であるStan FongとKenneth Chanが設立したTN Meatは、このほど最初の商品を香港市場に投入した。
TN Meatの植物肉は100%植物ベースで、「中国人の好みを満たすもの」になっている。
商品ラインナップは、ハンバーガー用パテ、牛ひき肉、チキンナゲットの3種類。
台湾の生産施設で製造しており、大豆やエンドウ豆を材料とし、遺伝子組換え材料は使わず、コレステロール、トランス脂肪酸も含まない。
3つの商品はこのほど、香港の大手ECサイトHKTV Mallで販売が開始された。
価格は3商品セットで99香港ドル(約1300円)。
単品価格は次のとおり。
- バーガー用パテ単品は38香港ドル(約500円)/150g
- 牛ひき肉単品は45香港ドル(約600円)/250g
- チキンナゲット単品は38香港ドル(約500円)/250g
このECサイトで販売されている本物の牛肉ひき肉の1つは250gあたり51ドルで、TN Meatの植物性ひき肉(250gあたり45ドル)は既存の牛肉価格よりやや割高(80円差/250g)だが、そこまで高くないことがわかる。
現在、レストランも含め、市内の小売業・販売店と交渉を進めているという。
まもなく資金調達を実施予定
TN Meatはこれまでのところ、自己資金で運営している。
次の商品として、牛肉スライスや豚ひき肉の代替食品を考えており、スケールアップのため、まもなくシードラウンドの資金調達を実施する予定でいる。
この資金調達が成功した後は、2021年には中国本土と、シンガポール、マレーシアなどの東南アジア市場に参入を目指す考えだ。
次々に登場する中国発の代替肉スタートアップ
TN Meatは2020年5月に設立された香港で最新の植物肉スタートアップ。
近年、中国では植物肉プレーヤーが続々と登場しており、次の企業は要チェックだろう。
- Hey Maet(ヘイ・ミート)
- Hero Protein(ヒーロー・プロテイン)
- Zhenmeat(珍肉)
- Starfield(スターフィールド)
- Green Monday(グリーンマンデー)
新型コロナ発生の最中、2020年4月に設立されたHey Maetの主な製品は、豚ひき肉、牛ひき肉、ソーセージ、ミートボール、チキンナゲットなど。
創業者のChichi Hongは、年末までにオフラインでの販路拡大をしたい考えを示している。Hey Maetへの出資者には、ビヨンドミートのサプライヤーであるShuangta Food(双塔食品)がいる。
Hero Proteinは2020年初頭に登場した上海発のスタートアップ。9月のプレシードで資金調達をしている。
北京発のZhenmeat(珍肉)は、植物性のザリガニと豚ひれ肉を開発している。2019年に、代替ひき肉を使った月餅(中国人に人気の菓子)をつくり、話題を呼んだ。
Starfieldは深圳発のスタートアップで、これまでの総調達額は1億ドルと資金調達額では中国最大を誇る。11月には、中国のKFCライバルDicosが中国本土2500を超える店舗でチキンバーガーメニューにStarfieldの代替肉追加を発表したばかり。
さらに、香港にはアジア植物肉の代表格グリーンマンデーもいる。
同社は、9月に約73億円という巨額の資金調達に成功。香港・マカオのマクドナルド全店舗へのメニュー導入、香港セブンイレブンでの販売も開始している。
中国市場を巡っては、米ビヨンドミートが11月に期間限定で新作・代替豚ひき肉を上海でリリースするなど、海外製の動きも見逃せない。
乱立する植物肉スタートアップのなかで、TN Meatは中国人に存在感を示せるだろうか?
「まもなく」行われるというシードラウンドの動向に注目したい。
参考記事
TN Meat: Hong Kong Duo Launches New Plant-Based Brand To Serve Local Demand
アイキャッチ画像の出典:TN Meat