ドイツの菌糸体スタートアップ企業Infinite Roots(旧称Mushlabs)が韓国の小売で菌糸体由来代替肉の発売を発表した。
韓国の大手食品メーカーPulmuoneと共同開発した代替肉製品を、同社ブランドEarth Diet(지구식단)から発売する。
Vegconomistの報道によると、発売される製品はバーガーパテとミートボールとなる。
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Infinite Rootsが韓国で菌糸体由来肉を販売
Infinite Rootsは各都市に施設を設置し、地元の産業副産物をアップサイクルした菌糸体由来食品を生産する、分散型かつ循環型の食料システムを構築するというビジョンを持って、2018年に設立された。
今年1月にはPulmuoneと提携し、韓国の消費者の嗜好に合わせた菌糸体由来製品の開発に取り組んできた。同社は、グローバル展開をする上で、現地消費者の嗜好を理解した現地パートナーとの協力が重要だと考えている。同月には、菌糸体ソリューションへの投資では欧州最大規模となる5,800万ドル(約86億円)の資金調達に成功した。
Infinite Rootsの創業者兼CEO(最高経営責任者)Mazen Rizk氏は、「私たちは肉の模倣を目指しているわけではありません。菌糸体の持つ自然で豊かな旨味を引き出すことに注力しています」と述べている。
Vegconomistの報道によると、同社原料は韓国では新規食品に分類されないものの、韓国当局は承認に先立ち、独立した審査を行い、安全だと結論づけたという。Infinite Rootsは、食品の品質において高い基準で知られる韓国で認められたことは、同社製品の品質の確固とした証明になるとVegconomistに述べている。
Infinite Rootsは、Pleurotus pulmonarius由来のバイオマスについて、アメリカ食品医薬品局(FDA)に対し、GRAS通知を提出し、現在回答を待つ段階にある。FDAへのGRAS通知は、GRAS自己認証の次のステップとして行うため、Infinite RootsはGRAS自己認証をすでにクリアしていることになる。
アメリカでの販売はまだ確認されていないが、Pulmuoneはアメリカでも大手食料品店に自社ブランド製品を供給していることから、アメリカでの販売でも協力する可能性がある。
マイコプロテイン:2023年の国内外ハイライト
国内ではまだ身近ではないマイコプロテインが、韓国に導入されたインパクトは大きい。2024年は、菌糸体由来のマイコプロテイン業界で大きな動きのある1年だった。
7月には大手ブランドのQuornが、「重要な影響をもたらす十分なスピード・規模」で肉摂取量を削減するため、ハイブリッド製品の提供を開始することを発表した。
同月には、欧州を代表するマイコプロテイン企業Mycorenaが倒産申請を発表し、ベルギーのNaplasolに買収された。
アメリカでマイコプロテイン×代替シーフードで初期から注目を集めてきたAqua Cultured Foodsが開発をシフトしたことも明らかになった。同社は現在も、マイコプロテインを製品に組み込む研究開発を継続している。
9月には、著名な代替肉のビヨンドミートが菌糸体由来ステーキ肉の発売計画を発表。
11月にはフィンランドのEniferが、北欧企業として初めて欧州食品安全機関(EFSA)に新規食品申請を提出。先日には同社初の試食会を開催し、PEKILOを使用した軽食を提供した。
10月には、米The Better Meat Co.がアメリカに続き、シンガポールで認可を取得した。
バイオマス発酵で生成されるマイコプロテインはタンパク質だけでなく、食物繊維を豊富に含み、ホールフードとされる。ビタミン、ミネラルも豊富なため、従来のタンパク質に代わる栄養価の高い選択肢として期待されている。
国内でも麹菌のマイコプロテインで事業化を目指す筑波大学の萩原大祐准教授、日本甜菜製糖と提携したNoMy Japan、Agro Ludensと提携するお多福醸造・オタフクソースなどの参入も見られ、農水省もマイコプロテイン事業に出資するなど、今後の盛り上がりが期待される。
参考記事
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アイキャッチ画像の出典:Infinite Roots