アップサイクル

ドイツ企業Infinite Rootsの菌糸体由来肉が韓国上市へ|マイコプロテインの2024年注目トピック

 

ドイツの菌糸体スタートアップ企業Infinite Roots(旧称Mushlabs)が韓国の小売で菌糸体由来肉の発売を発表した

韓国の大手食品メーカーPulmuoneと共同開発した代替肉製品を、同社ブランドEarth Diet(지구식단)から発売する。

Vegconomistの報道によると、発売される製品はバーガーパテミートボールとなる。

Infinite Rootsが韓国で菌糸体由来肉を販売

出典:Infinite Roots

Infinite Rootsは各都市に施設を設置し、地元の産業副産物をアップサイクルした菌糸体由来食品を生産する、分散型かつ循環型の食料システムを構築するというビジョンを持って、2018年に設立された。

今年1月にはPulmuoneと提携し、韓国の消費者の嗜好に合わせた菌糸体由来製品の開発に取り組んできた。同社は、グローバル展開をする上で、現地消費者の嗜好を理解した現地パートナーとの協力が重要だと考えている。同月には、菌糸体ソリューションへの投資では欧州最大規模となる5,800万ドル(約86億円)の資金調達に成功した

Infinite Rootsの創業者兼CEO(最高経営責任者)Mazen Rizk氏は、「私たちは肉の模倣を目指しているわけではありません。菌糸体の持つ自然で豊かな旨味を引き出すことに注力しています」と述べている

Vegconomistの報道によると、同社原料は韓国では新規食品に分類されないものの、韓国当局は承認に先立ち、独立した審査を行い、安全だと結論づけたという。Infinite Rootsは、食品の品質において高い基準で知られる韓国で認められたことは、同社製品の品質の確固とした証明になるとVegconomistに述べている。

Infinite Rootsは、Pleurotus pulmonarius由来のバイオマスについて、アメリカ食品医薬品局(FDA)に対し、GRAS通知を提出し、現在回答を待つ段階にある。FDAへのGRAS通知は、GRAS自己認証の次のステップとして行うため、Infinite RootsはGRAS自己認証をすでにクリアしていることになる。

アメリカでの販売はまだ確認されていないが、Pulmuoneアメリカでも大手食料品店に自社ブランド製品を供給していることから、アメリカでの販売でも協力する可能性がある。

マイコプロテイン:2023年の国内外ハイライト

出典:Infinite Roots

国内ではまだ身近ではないマイコプロテインが、韓国に導入されたインパクトは大きい。2024年は、菌糸体由来のマイコプロテイン業界で大きな動きのある1年だった。

7月には大手ブランドのQuornが、「重要な影響をもたらす十分なスピード・規模」で肉摂取量を削減するため、ハイブリッド製品の提供を開始することを発表した

同月には、欧州を代表するマイコプロテイン企業Mycorena倒産申請を発表し、ベルギーのNaplasol買収された

アメリカでマイコプロテイン×代替シーフードで初期から注目を集めてきたAqua Cultured Foods開発をシフトしたことも明らかになった。同社は現在も、マイコプロテインを製品に組み込む研究開発を継続している

9月には、著名な代替肉のビヨンドミートが菌糸体由来ステーキ肉の発売計画を発表

EniferのPEKILO Foovo佐藤撮影 2024年8月下旬フィンランドにて

11月にはフィンランドのEniferが、北欧企業として初めて欧州食品安全機関(EFSA)に新規食品申請を提出。先日には同社初の試食会を開催し、PEKILOを使用した軽食を提供した

10月には、米The Better Meat Co.がアメリカに続き、シンガポールで認可を取得した。

バイオマス発酵で生成されるマイコプロテインはタンパク質だけでなく、食物繊維を豊富に含み、ホールフードとされる。ビタミン、ミネラルも豊富なため、従来のタンパク質に代わる栄養価の高い選択肢として期待されている

国内でも麹菌のマイコプロテインで事業化を目指す筑波大学の萩原大祐准教授日本甜菜製糖と提携したNoMy JapanAgro Ludensと提携するお多福醸造・オタフクソースなどの参入も見られ、農水省もマイコプロテイン事業に出資するなど、今後の盛り上がりが期待される。

 

参考記事

Infinite Roots Brings Mycelium-Based Meat to South Korea Via Pulmuone After Hitting Regulatory Roadblock in EU

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Infinite Roots

 

関連記事

  1. 培養シーフードのShiok Meatsが生産コスト50ドル/kg…
  2. 米と麹で“食”と“エネルギー”問題の解決へ──アグロルーデンスが…
  3. フィンランドのEnifer、マイコプロテイン「PEKILO」で米…
  4. 代替卵イート・ジャストが欧州進出へ向けて加速、EUの承認待ち
  5. 代替肉のネクストミーツが新潟に代替肉の自社工場を建設、2022年…
  6. イート・ジャストが中国ファンドから約34億円を調達、代替卵JUS…
  7. 【2024年】マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート発売のお…
  8. QuornとPrime Rootsが菌糸体由来肉の市場拡大に向け…

おすすめ記事

中国の細胞性食肉企業Joes Future Food、中国・シンガポール当局と協議進める|第7回細胞農業会議レポート

丁世杰氏 Foovo(佐藤)撮影中国の細胞性食肉(培養肉)企業Joes Future Foodの…

世界初、ニホンウナギ由来の不死化脂肪前駆細胞株を樹立──“脂の乗った”培養ウナギに挑む|都産技研・北里大が新成果

出典:Establishment and characterization of spontaneo…

マイクロ流体チップによる農業用栄養分析デバイスを開発したNordetectが約1億6千万円を調達

室内垂直農業用の検査デバイスを開発するデンマーク企業Nordetectが、シード…

テックマジック、炒め調理ロボット「I-Robo2」を駅構内に初導入|一風堂 神田店に設置

2024年のフードテックweekで展示されたI-Robo2 Foovo佐藤撮影…

国内初|グリーンカルチャーが植物性ゆで卵の開発に成功

植物肉Green Meatで知られる日本のスタートアップ企業グリーンカルチャーが…

ニュージーランド政府、培養シーフード開発に約8.6億円を出資

2024年9月24日更新:記事公開当初、後半で記載のシンポジウムの開催時期を2024年としておりまし…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/09 16:13時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/10 02:49時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/10 06:21時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/09 22:13時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/09 14:14時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/10 01:31時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP