新しい食

カーギル、Kokomodoと培養カカオの共同検証を開始|大手で広がるカカオ調達の分散化

出典:Kokomodo

世界的な穀物・原料大手のCargillカーギル)は今月17日、イスラエル発の細胞農業スタートアップKokomodoと培養カカオ(細胞性カカオ)の共同検証を開始したと発表した

プロジェクトは、欧州イノベーション技術機構(EIT)の支援を受けるEIT Foodの概念実証共同資金調達制度(EIT Food’s ProofofConcept CoFinancing Instrument)を通じて進められる。

二社は、培養カカオを飲料、乳製品、菓子分野にどのように使用できるかを検証するとともに、機能性や官能特性、拡張性の可能性を産業規模で検証する。機能性の検証結果は今後数カ月以内に示される見込みとなる。

Kokomodoの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のTal Govrin氏は「世界で最も確立された原料メーカーの一つと提携することで、私たちの技術を産業規模で検証することが可能になります」とプレスリリースで述べた。

Kokomodoは非遺伝子組換えの細胞株からカカオを培養する技術を開発するイスラエル企業。Foovoの認識では、培養カカオは認可された事例は世界でまだないものの、従来のカカオ生産が抱える収量の変動や供給制約とは異なるソリューションとして複数のスタートアップが開発を進めている。

大手で広がるカカオ調達の分散化

出典:Cargill

注目すべきは、カーギルのカカオフリー化の動きは今回が初めてではない点だ。

同社はすでに米Voyage Foodsと植物性カカオ原料「NextCoa」で協業しており、その製造もアメリカ・オランダでカーギルが対応している。今回のKokomodoは植物細胞培養という別の技術であり、カーギルは、植物性と植物細胞培養という異なるアプローチを並行してカカオ調達のリスクを分散させる体制を築こうとしている。

この戦略は、チョコレート原料大手のBarry Callebautの動向とも重なる。同社は植物性カカオ「Choviva」を開発したPlanet A Foodsと長期にわたる商業提携を結ぶ一方、細胞培養カカオの研究開発にも取り組む。さらにPlanet A Foodsは精密発酵によるココアバター開発も進めており、Barry Callebautは複数技術をカバーしていることになる。

背景には、カカオ市場の構造的な不確実性がある。近年の価格高騰や供給変動は一過性の問題ではなく、長期的リスクとして認識されつつある。大手原料会社にとっては、単一の供給源や技術に依存すること自体がリスクとなりつつある。

その結果、代替カカオに参入する大手企業は増えており、明治ホールディングスLindtモンデリーズも培養カカオ企業への出資を進めるほか、不二製油は自社開発した植物性の代替カカオ素材の国内流通を開始している。海外のチョコレート会社が植物性・細胞培養をカバーする事例もある。

カーギルとKokomodoの提携は、カカオ調達のリスク分散戦略を象徴する新たな事例であり、今後、大手の代替カカオ参入の動きはより顕著になっていくことが予想される。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Kokomodo

 

関連記事

  1. シンガポールのPreferが代替チョコレートの試作品を発表、年内…
  2. MeliBio、高級レストランで蜜蜂フリーなハチミツの提供を期間…
  3. イオン、「チョコか?」でブロックタイプの代替チョコレートを新発売…
  4. 原料メーカーが動き始めた代替カカオ──CSM Ingredien…
  5. 香港IXON社が肉を2年間常温保存できるASAP技術を開発
  6. 代替カカオのForeverlandが約11億円を調達|イタリア・…
  7. シンガポール企業Mycosortia、おからをアップサイクルした…
  8. 砂糖削減・代替砂糖ソリューションを開発するスタートアップ企業13…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

GFIが「植物分子農業」を代替タンパク質の第4の柱として注目

代替タンパク質の普及を促進する非営利団体Good Food Institute(…

ポーランドのFresh Insetが開発した鮮度保持シール「Vidre+」: 葉物野菜の鮮度を24日間に延長

24日目のルッコラの比較。右がVidre+使用ほうれん草、ルッコラなど葉物野菜の鮮度を保持できる…

魚の培養脂肪を開発するインパクファット|日本人研究者がシンガポールで挑戦【創業者インタビュー】

畜産による環境負荷を軽減するため、植物由来や菌類由来の代替肉の普及が世界的に加速…

再生医療学会・培養肉シンポジウムレポート|再生医療研究者が「培養肉」をテーマに集結

先月開催された第21回日本再生医療学会総会では初の試みとして、「培養肉開発の現状…

Forsea Foods、培養うなぎの開発で細胞密度3億個/mL超を達成

今年は培養うなぎで大きな進展が相次いだ1年になった。8月、北里大学の池田…

スイスの食品大手ジボダン、ビューラー、ミグロが共同で培養肉の実証プラント建設を発表

スイスの大手食品企業が培養肉市場に参入する。ジボダン、ビューラー、ミグロは共同で…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

代替カカオレポート販売開始のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP