アップサイクル

廃プラスチック由来のクッキー「µBites」が進化、米大学が酵母でβカロテン・バニリンも生産

出典:南イリノイ大学カーボンデール校

廃プラスチックを食品原料へ変える研究が、新たな段階に入った。

南イリノイ大学カーボンデール校の研究チームは8月24日、ペットボトルや植物残渣に由来する炭素を酵母に利用させ、風味や色、栄養成分を備えた3Dプリント食品「µBites(マイクロバイツ)」を作る最新成果をアメリカ化学会(ACS)秋季大会2026で発表した。

廃プラスチック由来の炭素からクッキーを作ること自体は、今回が初めてではない。同大学は2024年、すでに廃プラスチックとバイオマスを利用した3Dプリント製クッキー「µBites」の作製を報告している。

チームはこのほど、廃プラスチックや植物残渣を原料に、タンパク質に加えてβカロテンやバニリンを生産し、味や色、栄養を構成する食品成分まで微生物で作る範囲を広げた。

廃プラから食品へ、2024年には3Dプリントクッキーを実現

2024年に作成したクッキー 出典:南イリノイ大学カーボンデール校

研究チームは2021年、深宇宙探査における最小限の資源と廃棄物で栄養価が高く安全でおいしい食品を作るという課題解決に向けて、NASAの「Deep Space Food Challenge」のチームに採択された。このチャレンジには空気タンパク質のソーラーフーズやマイコプロテイン企業なども採択されている。

廃プラやバイオマスをスラリー状に粉砕し、水、熱、圧力、酸素を用いて分解した後、酵母などの微生物が利用できる液体炭素に変換する。これを酵母に与えてタンパク質などへ変換する構想を描いていた。

2024年5月には研究成果を発表。チームは廃プラスチックとバイオマスを処理し、酵母によって得たタンパク質を利用して、3Dプリンターでクッキー状の食品を作製した。

この成果は同年6月、「廃プラスチックとバイオマスを原料とした次世代の3Dプリント栄養食品(邦訳)」というタイトルで「Trends in Biotechnology」に掲載された。

クッキー作製から次の段階へ、酵母で食品成分を高度化

出典:南イリノイ大学カーボンデール校

今回の進展は、タンパク質に加え、嗜好性を高める風味や栄養に関わる成分まで微生物で生成したことにある。

研究チームはパン酵母Saccharomyces cerevisiaeを遺伝子操作し、植物バイオマス由来のフェルラ酸からバニリンを生産。またRhodosporidium toruloidesを適応進化(*)させ、ポリエチレンテレフタレート(PET)由来のエチレングリコールを利用して、ビタミンA前駆体のβ-カロテンを生産する能力を高めた。

これらを酵母由来タンパク質と組み合わせ、風味・色・香り・栄養価を向上させたµBitesを製造できることを実証した。

*適応進化とは、生物の性質が、世代を経るごとに周囲の環境に対応して変化する現象をさす。

この背景には、それほど切迫した状況でない時にも、消費者が選びたくなるような商品にしたいというチームの考えがある。現段階では食物繊維、デンプン、甘味料は別途加えて、3Dプリンターでクッキーを作製しており、クッキーの全原料を廃プラスチックや植物残渣から作っているわけではない。将来的にはこうした成分も、微生物で生産したいと考えている。

「私たちは微生物を利用して、このクッキーをより魅力的で消費者フレンドリーな製品に発展させています」と研究チームのSandhya Jayasekara氏は述べている。

データでは「µBites」は安全に食べられることが示されているものの、試食を実施するために大学の承認を待っている段階だ。香りについては高い評価を得ており、参加者の多くは、資源が限られた環境であれば食べてみたいと回答しているという。

Lahiru Jayakody准教授は数年以内に一般の人が食べられる状態にしたいと考えている。

プラスチックを食品に転換する試みは、プラスチックの循環型経済に貢献するだけでなく、人口増加による食料需要増への対応策としても期待される。

「世界の食料需要は2050年までに35~56%増加すると予想されており、将来的に世界人口の約30%が飢餓の危機に瀕すると言われています。その解決策は微生物を使うことだと私は信じています」とJayakody准教授は述べている。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

フードテックの国内外ニュースを週1回まとめてお届けしております。
メールマガジン登録はこちらから

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:南イリノイ大学カーボンデール校

 

関連記事

  1. かつて年間8,000トンを生産──忘れられたマイコプロテインPE…
  2. EU、代替肉表示で動物名など31語の使用制限で暫定合意|強硬案か…
  3. 二酸化炭素から代替タンパク質を開発するJooulesが約1.5億…
  4. 英Meatly、イギリスで世界初の培養ペットフードを発売
  5. ブラジルの精密発酵企業Future Cow、最初の乳タンパク質試…
  6. 極限環境微生物で代替パーム油を開発するシンガポール企業Biteb…
  7. Nature’s Fyndの微生物発酵によるタンパク質「Fy」が…
  8. 培養肉を手掛ける細胞性食品スタートアップTissenBioFar…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

分子農業で代替タンパク質と成長因子を開発するスタートアップ企業4社

分子農業(Molecular Farming)とは、植物を「バイオリアクター」「…

カナダ企業のピザ自販機PizzaFornoが北米3ヵ国に進出

北米初のピザ自販機を開発したカナダ企業PizzaFornoがピザ自販機の導入エリ…

NotCoが約95億円を調達、食品業界向けのAIプラットフォーム構築へ

チリのフードテック・ユニコーン企業NotCoは12日、シリーズDラウンドで700…

チェコのBene Meat Technologies、培養ペットフードで欧州当局に登録

2025年4月11日 更新当初、販売認可と記載していましたが、その後の報道で市販前承認を必要…

タイソンフーズが出資するFuture Meatが培養鶏肉のコストダウンに成功、2022年に市販化へ

イスラエルの代替肉企業Future Meatは、自社の培養鶏肉の生産コストを1/…

アレフ・ファームズ、タイ初の培養肉工場建設でBBGI、Fermbox Bioと提携|慎重なスケールアップ戦略で持続可能な市場進出へ

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズは先月、タイに培養肉工場を建設することを…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

次回Foovoセミナーのご案内

細胞性食品(細胞培養食品)レポート販売開始

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

PAGE TOP