出典:PARIMA
イギリスを含めた多くの国で、培養肉など細胞性食品の事業化を目指す企業にとって障壁の一つは、「審査にどれだけ時間がかかるか分からない」ことだ。イギリスではこの不透明さが、2025年2月開始の「サンドボックス・プログラム」を通じて改善されつつある。
英国食品基準庁(FSA)が9月18日時点でまとめた報告書によると、申請者が最初の追加情報要求(RFI)を受け取るまでの平均期間は195日から46日へ、4分の1以下に短縮された(*)。
このプログラムを通じ、FSAとスコットランド食品基準局(FSS)は9月30日、細胞性食品の市場投入に向けて、新たなガイダンス2件を公開した。
*同報告書の本文では、3件の申請を対象に最初のRFI発出まで平均90日との記載もあり、集計対象によって数値が異なっている。46日は、2026年に発出されたRFIの平均期間となる。
技術ガイダンスがすべて出そろう、残るは規制ガイダンス

出典:Mosa Meat
英当局は2025年12月に、細胞性食品を衛生規則上の「肉」の法的定義に含めないとする規制ガイダンス、および「アレルゲン性」「栄養」を扱う最初の技術ガイダンスを公表した。
今年7月には「同一性」・「製造工程」・「微生物」を扱う2本目の技術ガイダンスが公開された。今回、残っていた「毒性」と「培地組成」を1本の技術ガイダンスとして公開したことで、技術ガイダンスで予定されていたテーマがすべて出そろった形となる。
規制ガイダンスでは、11月に「表示」、2027年1月に「衛生・生産・コンプライアンス」の公表が予定されている。
承認プロセスを明示、培地成分のリスト化

出典:Aleph Farms
今回公表された「規制認可ガイダンス」では、検証、リスク評価、公開協議、大臣による承認などの6段階のプロセスを明文化し、提出する情報や、申請前相談などを説明している。
あわせて公表された技術ガイダンス「毒性および成長培地の評価ガイダンス」は、培養液に使う基礎培地・成長因子・抗菌剤などに関するリスト作成に加え、化学名やCAS番号、最終製品での残留量などの情報を要求している。
初期審査は速くなったが、懸念も

出典:Bene Meat Technologies
イギリスではヒト向け細胞性食品の承認がまだ1件もない中、唯一市場投入で先行しているのは細胞性ペットフードだ。英Meatlyは2024年7月、欧州で初めて細胞性食品の販売認可を取得している。
昨年サンドボックス・プログラムが開始され、ガイダンスが順次公開されるにつれ、イギリスでヒト向け細胞性食品の市場開放に期待が集まっていた。
しかし現在、初期審査の迅速化の裏で新たな懸念が生まれている。
前述の報告書は、イギリスとEUの間で2027年半ばの発効が見込まれる「衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)」が、新規食品承認手続きに不確実性をもたらしうることを指摘している。
SPS協定は、食品添加物や香料、新規食品、遺伝子組換え食品などの承認についてEUとの間で整合性を図るものであり、発効すると、イギリスで細胞性食品を上市するには、EUでの承認が必要になる。
イギリスではすでにサンドボックス・プログラムによる審査が進行しているため、SPS協定が企業の投資判断や、サンドボックスの活動を損なうのではないかとの懸念が指摘されている。
実際に、細胞性ペットフードを開発するチェコのBene Meatは9月8日、英首相宛のレターで、SPS協定によってイギリスがEUの新規食品承認手続きに合わせることになれば、イギリスが築いてきた独自の審査制度の強みが失われかねないと訴え、イギリスで提出済みのヒト向けの新規食品申請や、現地生産に向けた協議などについて、さらなる進展を保留していることを明らかにした。
英当局は、SPS交渉の結果に関わらず、規制・技術ガイダンスの成果物を提供できると確信していること、その成果物は引き続き価値を持つと見込まれていると言及しているが、Bene Meatのように、交渉の先行きが見えない中で、イギリスでの事業活動の進展を抑える企業も出てきている。
日本では、消費者庁が2024年11月からガイドライン整備の議論を始めており、昨年の国際会議では担当者は「何年もかけるつもりはない」としていた。今年5月に安全性の確保に関するガイドライン案が公表されたが、その後、消費者庁で細胞性食品に関する審議会の開催は確認されておらず、審議の進捗が注目されている。
※本記事は、英当局の各発表をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:PARIMA
















































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