代替プロテイン

イスラエルのSuperMeat、欧州での細胞性鶏肉の商用生産に向け約5.4億円を調達|EU・スイス・英国の細胞性食品の審査動向まとめ

出典:SuperMeat

2025年12月5日:記事・タイトルを一部修正

イスラエルの細胞性食品スタートアップSuperMeat(スーパーミート)は今月、欧州での細胞性鶏肉(培養鶏肉)の商用生産に向けて350万ドル(約5億4,600万円)を調達した

細胞農業スタートアップに投資するベンチャーキャピタルAgronomicsが200万ドル(約3億1,000万円)を出資したほか、Milk and Honey Venturesも出資した。

今回の資金調達はSAFE(Simple Agreement for Future Equity:将来株式の簡易契約)を用いたもので、スーパーミートはSAFEの発行を通じて最大450万ドル(約7億円)の資金調達を進めている。

SAFE契約に応じた投資家は、次回の適格な資金調達ラウンド、またはその他の流動性イベントが発生した際に、事後評価額3,500万ドル(約54億円)を上限に70%ディスカウントで株式に転換できる。

欧州市場におけるスーパーミートの動き

出典:SuperMeat

スーパーミートはモサミートインテグリカルチャーUpside Foodsと並び、初期に設立された細胞性食品スタートアップ。

2015年に設立され、2020年にはイスラエルで細胞性鶏肉の試食に特化したレストラン「The Chicken」を開設し、製造工程を可視化したレストランとして注目を集めた

同社は1年前、アニマルフリー培地を用いた生産で、筋肉85%・脂肪15%から構成される100%細胞性鶏肉が1ポンド(約450g)11.79ドル(当時約1820円)のコストを達成したことを発表しており、商用化に向けて技術面でも進展している。

欧州市場への布石としては、2018年のPHWによる出資に続き、2022年にはPHWグループと欧州市場導入に向けた基本合意書(MOU)を締結した。スイスの小売大手Migros(ミグロ)とも協業関係を結んでおり、創業初期から欧州を重要市場として位置づけてきたことがうかがえる。2022年には味の素が出資を行った

一方で、2023年に計画していたアメリカ工場設置の続報は出ておらず、これまでの取り組みや今回の発表から、欧州市場に比重が移っていることがうかがえる。

EU・スイス・英国の細胞性食品の審査動向

出典:SuperMeat

ただし、今回のプレスリリースでは「欧州での商用生産」に向けた資金調達とあり、実際にどの地域で上市を目指しているかは言及されていない

一方で、これまでの流れから同社が欧州市場を視野にいれている可能性は高い。その前提で「欧州」を規制圏で分解すると、EUスイスイギリスという三つに分けることができる。

細胞性食品に限定すると、現在、EUではGourmey(現PARIMA)・モサミートの2社が新規食品申請を行っているが、承認はまだおりていない。Foovoの調査では、二社いずれもEFSAの審査状況が非公開のまま(2025年11月29日時点)であり、業界全体として承認まで時間を要する状況が続いている。

一方、スイスは独自の新規食品制度を運用しており、2025年9月12日時点の「新規食品申請一覧」で細胞性食品に関する複数の申請が公表されている。

品目名のみが公告され企業名は伏せられているものの、牛脂肪バイオマス/cell-cultivated bovine fat biomassモサミートと推定)、細胞性サーモン/Cell-cultivated SalmonWildtypeと推定)、細胞性食肉/Cultured meat productアレフ・ファームズと推定)、細胞培養によるアヒル細胞/Duck cells from cell cultureGourmeyと推定)の4例の細胞性食品の申請が確認された。一方で、スーパーミートに該当しそうな案件は現時点で確認されていない。

イギリスでは英国食品基準庁(FSA)が細胞性食品を対象とする2年間の規制サンドボックスプログラムを開始しており、Hoxton FarmsBlueNaluモサミートGourmeyRoslin TechnologiesUncommon BioVital MeatVowの8社が参画すると発表されている。

スーパーミートの名前は含まれていないため、同社が欧州での商用化を進める場合、イギリスよりも、既に関係構築を進めているスイスを足がかりにする可能性もある。

こうした状況から、スーパーミートが上市でも欧州展開を進める際に、まずどの市場を起点にするのかは依然として不明だ。EUの審査タイムラインが長期化する中で、PHWやMigrosとの協業を通じてスイスや周辺市場での事業展開を探る可能性も考えられる。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:SuperMeat

 

関連記事

  1. カナダのThe Better ButchersとGenuine …
  2. 米Alpine Bio、植物分子農業でラクトフェリン開発|非GM…
  3. 独Cultimate Foods、培養脂肪を使用したハイブリッド…
  4. “見えない卵”を置き換え、食卓の多様性を守る-日本企業UMAMI…
  5. イスラエルのImagindairyは精密発酵でアニマルフリーな乳…
  6. イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが約110億円を調…
  7. スペイン政府がBioTech Foodsの主導する培養肉プロジェ…
  8. 2024年のフードテックを振り返る:小売進出した培養肉、精密発酵…

おすすめ記事

フードロス削減に取り組むオランダ企業OneThirdが約1億9000万円を調達

フードロス削減に取り組むオランダ企業OneThirdが150万ユーロ(約1億90…

バナナの追熟をAIで予測する米Strellaのソリューション

米スタートアップ企業Strellaは、リンゴなどを保管するCA貯蔵庫の熟成度をリ…

香港グリーンマンデーの代替豚肉オムニポークが米国上陸

グリーンマンデーが今年後半にもアメリカ市場へ本格参入する。具体的には、グ…

アレフ・ファームズ、タイ初の培養肉工場建設でBBGI、Fermbox Bioと提携|慎重なスケールアップ戦略で持続可能な市場進出へ

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズは先月、タイに培養肉工場を建設することを…

韓国政府、2022年の国家計画に培養肉のガイドラインを追加

韓国の食品医薬品安全処が、国家計画に初めて代替タンパク質に関するガイドラインを盛…

細胞農業のスケールアップを支援するスウェーデンのRe:meat、年内にパイロット施設の設置へ

出典:Re:meatスウェーデンのバイオテック企業Re:meatは先月、Biotech Heig…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/29 16:37時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/30 03:26時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/29 06:56時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(01/29 22:43時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/29 14:40時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(01/30 02:03時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP