出典:Joes Future Food
培養肉などの細胞性食品の商用化は進展しているものの、「豚」については販売認可は少ない。こうした中、この領域に中国企業が踏み込み始めている。
Joes Future Foodは今月12日、「中国最大」のパイロット工場の試運転を実施し、2,000リットルのバイオリアクターで細胞性豚肉の試験生産を完了したことをリンクトインで発表した。同社によれば細胞性豚肉の試験生産では世界初の規模となる。
新工場は年産10~50トン規模の生産を見込んでおり、将来的には年産1万トンの生産ライン構築を計画している。
これまでにヒト向けの細胞性食品で販売できる状態に到達した企業は7社あるが、鶏肉を開発する企業が4社と多い(GOOD Meat、Upside Foods、PARIMA、Believer Meats(承認を得たが事業停止))。
残る3社はサーモンのWildtypeと、豚脂肪のMission Barns、ウズラのVowとなる。また、アレフ・ファームズは牛肉でイスラエルでの安全性審査をクリアしている。

Foovo作成
「豚」の認可事例が少ない中、Joes Future Foodは細胞性豚肉で商用化に向けて前進した形となる。
2019年に設立されたJoes Future Foodは、2022年に細胞性の豚バラ肉や脂肪、豚皮などの試作品を披露し、筋肉と脂肪の共培養から、低コストの無血清培地、マイクロキャリアを使用しない浮遊培養などのブレイクスルーを実現した。
さらに同年、100リットルバイオリアクターでの試作段階に移行。2023年には500リットルでの培養に成功し、細胞性豚脂肪の試験生産に成功した。

出典:Joes Future Food
今年8月に開催された第7回細胞農業会議でCEO(最高経営責任者)である丁世杰(Shijie Ding)氏は、豚バイオマスと植物タンパク質とのハイブリッド製品における成果に言及し、「3年後には市場により多くの細胞性食品製品が現れるでしょう」と語った。
Joes Future Foodは、3Dプリンターを用いた構造化された豚バラ肉や、ハニカム構造の肉、肉チップを添えたコンソメジュレなど多様な製品を試作している。
細胞性食品を推進する中国の戦略

出典:Joes Future Food
こうしたJoes Future Foodの動きは、単独企業の成果にとどまらず、中国が国家として細胞性食品を戦略分野に位置づけている流れの中で捉える必要がある。
GFI APACの分析によれば、細胞性食品分野の特許出願では中国が世界最多となっており、上位出願人には江南大学や浙江大学など公的研究機関が名を連ねる。米国で民間主導の特許が多いのに対し、中国では公的機関の関与が際立つ点は、国家主導で意図的にエコシステム構築を進めていることを示唆するとGFIのRyan Huling氏は分析する。
政策面でも「大食物観」や中央一号文件での表現変化に加え、地方政府による具体的な拠点整備計画が進んでいる。
中国は2021年、5カ年計画の「未来の食品製造」に初めて「培養肉」の文言を盛り込んだ。
今年1月には、北京市豊台区に中国初となる培養肉と微生物発酵に特化した代替タンパク質センターが設立された。細胞性食品の工業生産に向けた空白を埋めるモデルケースとしての役割が期待されるもので、培養肉用に2,000リットルのパイロット生産ライン2基の増設を計画している。
同センターの設置は、細胞性食品を研究段階にとどめず、産業として育成する中国政府の明確な意思を示すものといえる。
さらに北京市平谷区を細胞性食品など代替タンパク質のイノベーション拠点にするための行動計画も発表された。加えて、Codexでの培地の安全性を巡る国際議論への関与など、研究・産業・規制を同時に押し進める姿勢が鮮明になりつつある。
Joes Future Foodの2,000リットルでの試験生産達成は、こうした国家戦略が社会実装に向けて動きだしていることを表している。
※本記事は、リンクトインの投稿をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Joes Future Food




















































