CEOの羽生雄毅氏 出典:インテグリカルチャー
単年度黒字化の達成に続き、インテグリカルチャーが細胞農業の事業化を次の段階へ進める。
同社は2026年3月3日、住友理工と戦略的パートナーシップに関する覚書を締結し、2026年にシンガポールで家禽由来細胞の細胞性食品の承認申請を目指すと発表した。
現地では製造パートナーのCell AgriTechの施設で、食品グレード培養資材や、2リットルの細胞培養バッグ「Oxy-thru Cultivator」を用いた商用生産プロセスの検証・立ち上げを進める。承認申請に必要なデータを集め、年内の申請を目指す。
日本国内では細胞農業の受託研究・開発・製造事業(CRDMO)を発展させる形で、住友理工と受託製造サービスの立ち上げにも着手する。

出典:インテグリカルチャー
今回使われる2リットルの培養バッグ「Oxy-thru Cultivator」は、同社が運営するCulNetコンソーシアムで住友理工と共同開発したもの。
住友理工の高ガス透過性素材と精密成型技術、インテグリカルチャーの低コスト培養ノウハウを組み合わせ、バッグ1個当たり(足場込みで)月産1kgを実現した。
住友理工の発表によると、2024年に試験販売を開始後、累計出荷数は100個を超えたほか、アヒルなど家禽類由来の細胞だけでなく、哺乳類・魚類・植物細胞でも高効率の培養を確認している。
数千〜数万リットル級のバイオリアクターに依存する従来型のスケールアップではなく、初期投資を抑えながら生産能力を高めるスケールアウト型の生産に向けて開発された。市場の成長に合わせて段階的な生産拡張が可能で、バッグ単位で独立運転させることで、トラブル発生時のリスク分散にもなる。
金融支援と研究成果が後押し
インテグリカルチャーは今年1月、みずほ銀行から3億円の特別当座貸越の融資を受けたと発表。同社の血清代替成分を生成する「CulNet®(カルネット)システム」が評価され、支援につながった。資金は細胞性食品の上市に向けた生産開発、新規顧客獲得に向けた事業開発に充てる。
共同創業者・CEO(最高経営責任者)の羽生雄毅氏は同発表で、単年度黒字達成や今回の支援は、細胞農業のバリデーションが着実に進んでいることを示すものだと述べた。
みずほ銀行からは昨年2月にも1億円の特別当座貸越の融資を受けている。今回、昨年に続く支援となり、みずほ銀行がインテグリカルチャーの事業性を継続的に評価していることがうかがえる。

出典:インテグリカルチャー
2月には、同社の無血清・食品グレード培地生産に関するライフサイクルアセスメント(LCA)の論文が国際学術誌『Future Foods』に掲載された。
同論文は、細胞性食品で使用する無血清・食品グレード培地の生産を対象にLCAを実施したもので、特に血清代替品の製造が環境負荷の大部分を占めることを示した。その上で、製造規模の拡大やエネルギー効率の改善により、環境負荷を70%以上削減できる可能性が示された。
同社は地域の水や副産物を生かした地方創生型の細胞農業にも取り組みを広げている。
シンガポールで認可取得と商用生産の検証を進めつつ、日本では受託製造や地方創生モデルの整備を進めることで、細胞農業の社会実装を目指している。
シンガポールではこれまでにGOOD Meat、Vow、PARIMAがヒト向けの細胞性食品で販売認可を取得している。一方で、モサミート、アレフ・ファームズなど、数年前に申請した動向が確認できるものの、承認にいたっていない企業もある。

Foovo作成
MeatableやBeliever Meatsなど大手培養肉企業の事業終了が続く中、国内発の細胞性食品企業がシンガポール上市に向けて動き出した。
羽生氏は「細胞農業の先進地であるシンガポールへの進出は、当社にとって非常に大きなステップです」とプレスリリースで述べた。
※本記事は、2社のプレスリリース(①・②)をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
フードテックの国内外ニュースを週1回まとめてお届けしております。
メールマガジン登録はこちらから
関連記事
アイキャッチ画像の出典:インテグリカルチャー





















































この記事へのコメントはありません。