出典:Better Dairy
精密発酵による乳タンパク質の開発が、乳製品の代替から特定の機能を持つ高付加価値素材へと広がっている。
イギリス・ロンドンを拠点とするBetter Dairyは10月19日、精密発酵で開発したラクトポンチンについて、アメリカでGRAS自己認証を完了したと発表した。同社は顧客企業と協力し、今後数ヵ月以内の上市を見込む。
母乳に含まれるラクトポンチンを精密発酵で生産

出典:Better Dairy
ラクトポンチンは、母乳や牛乳に含まれるタンパク質オステオポンチンの別名とされる。
オステオポンチンは、骨組織を始め、さまざまな組織や細胞で確認されており、近年、ミルク中のオステオポンチンはラクトポンチンと呼ばれている。組織の成長や修復、再生に関わる重要なタンパク質で、牛乳に存在するものの、サプリメントなど機能性成分としての利用は限られていた。
公式サイトによると、Better Dairyはラクトポンチンを生産するようプログラムした酵母に水や糖類を与えて増殖させることで、酵母にラクトポンチンを分泌させている。同社論文によると、Kluyveromyces lactisという酵母を使用している。
これは精密発酵と呼ばれる技術で、遺伝子組換え微生物に特定成分を生成させる手法をいう。糖尿病治療薬のヒトインスリンなどの開発でも長く使用されている技術だ。
Better Dairyは、得られたラクトポンチンを精製し、乾燥した粉末として最終製品の原料用に供給する。
同社はラクトポンチンについて、健康的な加齢、腸内環境、免疫力向上、皮膚や関節の健康、運動後の回復など、幅広い用途に利用できるタンパク質だと位置づけており、栄養業界向けの市場投入を目指している。なお、アメリカで乳児栄養向けに使用するには、追加の規制対応が必要となり、Better Dairyは乳幼児向けの展開も目指す考えだ。
乳製品代替から高付加価値の機能性素材へ

出典:Better Dairy
2020年創業の同社は当初、ハードチーズなど代替乳製品向けにカゼインを開発していたが、2025年からオステオポンチンに重点を広げた。コモディティ商品である乳製品を置き換える量産が前提の素材ではなく、少量で付加価値を生み出せる機能性成分を先行させる戦略といえる。
近年、同様の戦略は他社でも進む。
ポルトガルのPFx Biotechはヒトラクトフェリンを中心に、オステオポンチンやα-ラクトアルブミンを開発対象としている。同社CEOのAli Osman博士は、先週東京で開催された食品開発展に登壇し、スケールアップを進めていることを報告した。
オーストラリアのAll Gは精密発酵でウシラクトフェリン開発を手掛けるが、特に鉄結合能力の高いアポラクトフェリンをアメリカで商用化している。
同社はさらに、母乳に含まれるヒトβ-カゼインも開発しており、今年3月には、スケールアップに向けてオーストラリア州政府から約111万豪ドル(約1.2億円)の助成対象に選ばれた。
さらにEden Brewは、代替乳製品向けの展開を目指していたカゼインを、鉄やマグネシウム、亜鉛などを取り込み、徐々に放出する機能性素材としてサプリメントなどに活用する戦略にシフトした。今年、アメリカでGRAS自己認証を完了している。
3~4年前の精密発酵食品では、ミルクやアイスクリームの代替を目指す動きが目立っていたが、現在は、乳製品を置き換えるタンパク質の生産だけでなく、それぞれの成分が持つ機能性を訴求する方向へと、戦略のシフトが見られている。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクまたはページ番号を付与しています。
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