代替プロテイン

2024年のフードテックを振り返る:小売進出した培養肉、精密発酵の前進、代替カカオに注目

 

こんにちは。Foovoを運営している佐藤あゆみです。

今回は、2024年のフードテック業界の主なトピックを振り返りつつ、Foovoの活動を総括してみたいと思います。

培養肉の進展

2024年は培養肉においていくつかの重要なマイルストーンがありました。

特に注目したいのは、シンガポールで初めて小売店で培養肉製品が発売されたことです。イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが発売した「GOOD Meat3」は、製品全体に占める培養鶏肉の割合は3%と少ないですが、それまでのレストランでの限定的な供給から、小売店の冷凍コーナーで一般消費者が購入できるようになった点で画期的でした。GOOD Meatが2025年はどんな販売戦略を打ち出すのか、注目したいと思います。

また、シンガポール、アメリカに続き、新たにイスラエル、香港でも培養肉の認可が下りました。イギリスでは培養ペットフードが認められました。

培養肉の試食会も増えた1年でした。特筆すべきは、オランダでEU初の培養肉試食会が開催されたことです。MeatableMosa Meatがオランダで試食会を開催しました。このような培養肉のグローバルな動向は、Foovoが12月に開設したインスタグラムでも図解で紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

国内では、北里大学の池田大介准教授がニホンウナギの筋芽細胞株の樹立、東大の竹内研究室が5.5cm×4cm×1.5cmの培養肉の作製に成功するなど、研究が進展しました。

さらに、イスラエルのForsea Foodsによる培養うなぎの試食会や、Wand Fishによる培養マグロの試作品発表など、販売認可の事例はまだありませんが、培養魚でも進展が見られた一年でした。

培養肉関連の記事

 

【世界初】シンガポールの小売店で培養肉の購入が可能に|米GOOD MeatがHuber’s Butcheryで新製品の販売を開始
アレフ・ファームズがイスラエルで培養牛肉の承認を取得|牛肉では世界初
英Meatlyがイギリスで培養ペットフードの販売認可を取得、年内に販売へ
オーストラリアのVow、香港で培養肉販売認可を取得|シンガポールに続き2例目
Meatable、EU初の培養肉試食会をオランダで開催
モサミートが培養牛脂の公式試食会をEUで初めて開催、ハイブリッドビーフパテを披露
北里大学、ニホンウナギの筋芽細胞株の樹立に成功|持続可能なウナギ供給に向けた重要な一歩
東大竹内研、脂肪を含む5.5cm×4cm×1.5cmの培養肉作製に成功|さらに中空糸使用のトップダウン戦略でスケールアップに挑戦【セミナーレポ】
イスラエルのForsea Foodsが世界で初めて培養うなぎの試作品を発表
イスラエルのWanda Fish、初となる培養マグロの試作品を発表、2025年に承認申請へ

 

精密発酵とマイコプロテイン

精密発酵でも進展がみられました。Impossible Foodsのレグヘモグロビンが欧州食品安全機関(EFSA)で安全性を認められ、いよいよ最終決定の段階に進んでいます。

また、2024年に期待された精密発酵カゼインの上市は本日時点で発表はなく、2025年に持ち越されると思われますが、ホエイやカゼイン、さらにはラクトフェリンでGRAS自己認証を達成した企業が増えています。

マイコプロテインのニュースも多い1年でした。

大手ブランドのQuornがハイブリッド製品への参入を発表し、Beyond Meatが菌糸体ステーキ肉への進出計画を発表しました。ただし、スウェーデンのMycorenaの破産申請は業界に衝撃を与え、その後、Naplasolに買収されています。アメリカのThe Better Meat Co.のシンガポールでの認可取得、フィンランドのEniferによる欧州での新規食品申請、欧州投資銀行(EIB)による菌糸体肉では初となるMATRへの出資、さらには韓国でも菌糸体肉の上市が進むなど、業界の盛り上がりを感じる1年でした。

 

精密発酵・マイコプロテイン関連の記事

 

インポッシブル・フーズの大豆レグヘモグロビンをEFSAが安全と判断:GMOパネルが結論を発表
Imagindairyがイスラエルで精密発酵ホエイの認可を取得 - 販売を続ける大手企業の状況も紹介
オーストリアのFermify、精密発酵カゼインで米国GRAS自己認証を取得
All G、精密発酵ウシラクトフェリンでGRAS自己認証を取得|世界で2社目
オーストラリアのAll G、中国本土で精密発酵ウシラクトフェリンの認可を取得
デンマークの21st.BIO、アメリカで精密発酵ホエイのGRAS自己認証を取得
Quornがハイブリッド製品市場への参入を発表|マイコプロテインで肉消費削減を加速
ビヨンドミート、菌糸体由来ステーキ肉の発売計画を発表
VEOSグループ傘下のベルギー企業Naplasol、マイコプロテイン企業Mycorenaを買収
The Better Meat Co.がシンガポールでマイコプロテイン認可を取得|日本でもマイコプロテインの波
Enifer、北欧マイコプロテイン企業で初の新規食品申請
デンマークのMATR Foods、欧州投資銀行から約31億円の融資で菌類由来代替肉の工場建設へ
ドイツ企業Infinite Rootsの菌糸体由来肉が韓国上市へ|マイコプロテインの2024年注目トピック

 

代替カカオへの注目

2024年後半は代替カカオの開発に注目が集まりました。

細胞培養や植物ベースの技術を活用する企業が増え、そら豆を活用してカカオフリーチョコレートを開発する英Nukokoへの取材も実現しました。この分野の開発加速はカカオ価格の高騰とも関連しており、Foovoでは特集記事としてまとめる予定です。

 

代替カカオ関連の記事

チョコレート会社創業者が立ち上げたNukoko、そら豆由来のカカオフリーチョコレートを来年上市へ【創業者インタビュー】
デンマークのセブンイレブン、Endless Food Coのビール粕由来代替チョコを使ったクッキーを限定販売|日本でもビール粕利用の開発事例
培養カカオを開発するCelleste Bioが約6.8億円を調達|培養カカオに取り組む6社まとめ
明治ホールディングス、細胞培養チョコレートの米California Culturedに2回目の出資

 

Foovoの2024年活動報告

Foovoの活動も振り返りたいと思います。2024年、Foovoにとって新しい挑戦の多い1年でした。

今年はオランダフィンランドシンガポールに出張し、海外の現地調査を行いました。特に、オランダでは国際カンファレンスへの初参加、現地での企業取材を通じて、ネットワークを広げました。3か国ではスーパーマーケットなど現地調査を行い、レポートやセミナーでまとめておりますのでぜひご覧ください。

また、今年は念願だった培養肉を食べることができました(GOOD MeatVow)。ほかにも、QuornEniferのマイコプロテイン、Redefine Meatの代替ステーキ肉、Revo Foodsのマイコプロテインを使用した3Dプリンター製サーモンなど、さまざまな新しい食品を試すことができました。

さらに、今年は5回のセミナー開催、3本の企業向けレポート発行(総計672ページ)、初のリアルセミナーや英語ウェビナーの開催も実現しました。

 

独自レポート関連の記事

 

オランダの大手スーパー売り場で見る代替乳製品の今|現地レポート
オランダ大手スーパー、植物由来食品44%の販売率を報告|売り場戦略を考察する【現地レポート】
【現地レポ】シンガポール・スーパーマーケットでの精密発酵食品の販売状況を調査
【現地レポ】シンガポールで培養ウズラ肉を実食|Vowの「Forged Parfait」
オランダのスーパーで買った代替コーヒーを試飲|業界でカフェオレ提供が多い理由も考察
フードテック現地レポート会・セミナー動画|2024年10月開催
代替タンパク質を「ニッチ」から「定番」に:業界リーダーが語る普及戦略|欧州セミナーレポート
【現地レポ】米GOOD Meatの培養肉実食レビュー@シンガポール
【現地レポ】フィンランド企業EniferのマイコプロテインPEKILOを試食@フィンランド
【現地レポ】Quornのマイコプロテインを食べてみた@シンガポール
欧州で広がるRedefine Meatの代替肉、現地レストランで味わった食感と味のリアルな感想

 

2024年の人気記事ランキング

最後に、2024年にFoovoで最も読まれた記事トップ10をご紹介します。もしまだご覧になられていない記事がありましたら、ぜひクリックしてみてください。

 

2024年もFoovoをご愛読いただきありがとうございました。2025年のフードテックはどんな1年になるでしょうか?

 

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アイキャッチ画像は、GOOD Meat 3を販売するシンガポールの小売店冷凍コーナー/Foovo(佐藤)撮影

 

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