新しい食

EU、植物細胞培養によるカカオ生産を1万L規模へ|EU支援のCOCO-AI始動

Foovo(佐藤あゆみ)撮影

欧州で、人工知能(AI)と植物細胞培養を組み合わせ、カカオ細胞の工業規模での培養実証を目指すプロジェクト「COCO-AI」が始動した。世界から9の団体が参画し、細胞性カカオの開発加速・コスト削減を目指す。

EUの研究・イノベーションプログラム「Horizon Europe」の支援を受け、2026年5月から2030年4月までの4年間で、カカオ細胞の培養を最大1万Lのバイオリアクターまでスケールアップする。

プロジェクト総額は約629万7,000ユーロで、このうちEUが約550万ユーロを拠出する。

最初の実証対象としてカカオを採用し、6種類の新たな二次代謝産物の配合物と2種類のチョコレートバー試作品を開発する計画だ。

COCO-AIは、植物細胞培養を活用し、AIで最適化されたプラットフォームの構築を目指す。植物細胞培養は、植物全体を農地で栽培する代わりに、管理された環境のもと、植物から得た細胞をバイオリアクターで培養し、目的成分を生産する技術をいうが、開発期間の長さや標準化された工程の不足、高コストなどが産業利用の課題となっている。

同プロジェクトでは、AIにマルチオミクス、画像、プロセスデータを統合し、培地や培養条件を最適化することで、開発期間とコストの削減を図る。

スケールアップは2004年に設立されたイギリスの技術イノベーションセンターCPIが主導し、50Lのパイロット設備から1万Lの実証規模まで製造プロセスを開発する。CPIは技術経済性分析(TEA)も主導し、生産コストやビジネスとしての可能性を検証するほか、ライフサイクルアセスメント、規制対応計画、ビジネスモデルの構築も支援する。

CPIの施設には、750L、2,000L、1万Lへのスケールアップが可能な設備があり、微生物、哺乳類、植物の細胞培養に関する知見を有している。

COCO-AIの対象はカカオに限らない。カカオで実証した後、さらに8種類の植物種にプラットフォームを適用する計画で、オープンソースのAIツールや公開可能なデータセット、標準作業手順も整備し、企業の参入障壁を下げる。

細胞性カカオ、先行企業は2,500Lのバイオリアクターを使用

Kokomodoの細胞性カカオ使用のドリンク Foovo(佐藤あゆみ)撮影

カカオの細胞培養では、カーギルと細胞性カカオの共同検証を進めるイスラエルのKokomodoや、Mondelez Internationalと共同で細胞性ココアバターを用いたチョコレートの試作品を開発したCelleste Bio、来年に商用生産を計画する米California Culturedなど、複数のプレイヤーが登場している。

培養の規模では、California Culturedが1,600Lでの培養実証に加え、再利用可能なプラスチック製の2,000Lバイオリアクターを使用している。Celleste Bioは年内に1,000Lへのスケールアップを目指しており、フィンランドのチョコレート会社Fazerは、1,000Lバイオリアクターでの培養に成功している。スイスのFood Brewerは2,500Lバイオリアクターを有する。

このように、カカオ細胞の培養に早期から取り組む企業が使用するバイオリアクターはおおむね、1,000~2,500Lの範囲にとどまる。これに対し、COCO-AIは最大1万Lまで培養プロセスをスケールアップする計画で、実現すれば現在の業界水準を上回る規模となる。

Fraunhoferがコーディネーターを務めるCOCO-AIには、細胞性カカオ企業ではKokomodo、Celleste Bioの2社のほか、植物細胞培養企業iNGR(韓国)、CPI、ワーゲニンゲン大学(オランダ)、カウナス工科大学(リトアニア)、ラヴァル大学(カナダ)、Aberland World Serviceが参加する。

天然由来成分の供給が気候変動や病害、サプライチェーンの影響を受けるなか、植物細胞培養を従来の農業を補完する生産手段として、どこまで実用レベルに引き上げられるかが注目される。

 

※本記事は、COCO-AIプロジェクトページおよびプレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

フードテックの国内外ニュースを週1回まとめてお届けしております。
メールマガジン登録はこちらから

 

関連記事

アイキャッチ画像はFoovo(佐藤あゆみ)撮影

 

関連記事

  1. とうもろこしから作られる砂糖|植物繊維のアップサイクルで砂糖を開…
  2. キリンが減塩をサポートするエレキソルトスプーンを発売
  3. 携帯可能なアレルギーセンサーを開発するAllergy Amule…
  4. 昆虫の消化が生む、まだ知らない味|「虫秘茶」が広げる食の境界線【…
  5. 米Yali Bio、米国で今年後半に精密発酵ココアバターの小規模…
  6. カカオのアップサイクルに取り組むKoaが約21億円を調達、廃棄カ…
  7. 細胞培養により持続可能で高品質なカカオを生産するCelleste…
  8. 明治ホールディングス、細胞培養チョコレートの米Californi…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

【現地レポ】ソーラーフーズ、ソレインを商用生産する工場を稼働/ソレイン使用のシンガポールレストランを訪問

フィンランド企業ソーラーフーズ(Solar Foods)は今月15日、代替タンパ…

Celleste Bio、植物細胞培養によるココアバターで2027年末~2028年初頭の上市へ【創業者インタビュー】

Hanne Volpin氏 Foovo(佐藤あゆみ)撮影ココアバターに注力するイスラエルの細胞性…

植物性シーフードの米Impact Foodが事業終了、米国で展開も「消費者行動を変える難しさ」

出典:Impact Food植物由来シーフードを開発する米Impact Foodが、5年以上にわ…

スイスのPlanetaryが約44億円調達|製糖会社向けライセンスでマイコプロテイン事業の拡大へ

出典:Planetaryスイスのフードテック企業Planetaryは先月、シリーズAで1600万…

オーストラリアのVowが約67億円を調達、来年始めにシンガポールで培養肉発売へ

オーストラリアの培養肉企業Vowは、シリーズAラウンドで4920万ドル(約67億…

Zero Cow Factoryが約5.2億円を調達|カゼインタンパク質で上市を目指すインドの精密発酵企業

インド初の精密発酵スタートアップ企業Zero Cow Factoryがシードラウ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

次回Foovoセミナーのご案内

細胞性食品(細胞培養食品)レポート販売開始

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

PAGE TOP