出典:Nature’s Fynd
シンガポール食品庁(SFA)は3月、同国で輸入・販売を認めた新規食品リストを公開した。
2026年3月17日時点のリストには、細胞性食品、藻類バイオマス、菌糸体・マイコプロテイン、ガス発酵由来タンパク質、精密発酵由来のヒトミルクオリゴ糖(HMO)などが掲載されている。
一方で、シンガポールで認可・販売実績のある他の精密発酵由来原料は確認できず、同リストは現時点で、承認されたすべての新規食品を反映していない可能性がある。
シンガポールはこれまで、新規食品として承認した事例を公表してこなかった。そのため、スタートアップ各社が自社で認可取得を発表しない限り、承認状況を外部から把握することは難しかった。
今回のリスト公開により、同国でどのような新規食品が食品として認められているのか、食品名、生産株、遺伝子改変の有無、培地・投入物、製造プロセスといった項目から確認できるようになった。ただし、SFAのリストには企業名は公表されず、食品そのものと製造プロセスを整理した資料となっている。
細胞性食品

出典:SFA
細胞性食品では4件が掲載されている。
同カテゴリの第一号として2020年11月にUMNSAH/DF1細胞由来の細胞性鶏肉が承認されており、DMEM/F12を基礎培地とし、FBSを含む培地を用いると記載されている。
2023年1月には、同じUMNSAH/DF1細胞由来で、FBS不使用培地を用いる細胞性鶏肉も承認された。これらはイート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatの細胞性鶏肉となる。

GOOD Meatの細胞性鶏肉 Foovo(佐藤)撮影 2024年7月下旬
2024年3月には、ニホンウズラの胚性線維芽細胞(embryonic fibroblasts)に由来する細胞性ウズラが承認された。SFAリストでは、200Lから2万Lの攪拌槽バイオリアクターで拡大培養され、目標密度は30g/L以上と記載されている。これはオーストラリア企業Vowの細胞性ウズラとなる。
2025年10月には、鶏胚性幹細胞に由来する鶏肉バイオマスも承認されており、動物由来成分を含まない培地を使用すると記載されている。これは仏PARIMAの細胞性鶏肉となる。
リストは3月までのもので、同社は4月、細胞性アヒルでも同国認可を取得した。
菌糸体・マイコプロテイン

出典:SFA
菌糸体・マイコプロテインでは4件が確認された。
2021年8月にNature’s FyndのFusarium strain flavolapis由来の菌糸体バイオマスが承認されている。
2024年3月にはオランダ企業The Protein BreweryのRhizomucor pusillus由来バイオマス(Fermotein)が、2024年10月にはThe Better Meat Co.のNeurospora crassa Bstr 26由来のマイコプロテイン(Rhiza)が承認されている。
2025年9月には、Pleurotus pulmonarius由来の菌糸体バイオマス「Pleurotus pulmonarius mushroom mycelium」が掲載されている。これに該当する企業は、ドイツのInfinite Rootsの可能性が考えられる。同社がアメリカ食品医薬品局(FDA)に提出した資料にも同じ菌類の記載が確認されている。
藻類・ガス発酵

出典:SFA
藻類では、Chlamydomonas reinhardtii由来の緑色藻類バイオマスが2019年5月に、赤色藻類バイオマスが2022年10月に承認されている。いずれも食品グレードの基質を用いており、これは米Triton Algae Innovationsのものとなる。
ガス発酵由来タンパク質では、Xanthobacter sp. SOF1由来のタンパク質粉末が2022年9月に承認されている。「Solein」の記載があり、これはフィンランド企業ソーラーフーズの製品となる。乾燥重量あたりのタンパク質は73%以上とされている。
精密発酵と気になる点

出典:SFA
精密発酵では、遺伝子組換え大腸菌を用いて生産される3’-シアリルラクトース(3’-SL)ナトリウム塩および6’-シアリルラクトース(6’-SL)ナトリウム塩が2025年6月に承認されている。いずれもヒトミルクオリゴ糖(HMO)の一種となる。
この申請は、JBT-3SL/JBT-6SLの株名から、Novonesisグループ傘下のChr. Hansenによるものだと思われる。
一方で、SFAの公開リストには、精密発酵由来の乳タンパク質で認可を取得している米Perfect Day(パーフェクトデイ)やイスラエルのRemilk、大豆レグヘモグロビンのImpossible Foodsに相当する項目は確認できない。
Remilkは2023年にシンガポールでの認可取得を発表している。Perfect Day由来の乳タンパク質を使った製品やImpossible Foodsの製品もシンガポールで販売実績があり、筆者も実際に現地で購入したことがあるため、今回のリストは現時点で、承認された新規食品すべてを網羅していない可能性がある。

シンガポールのスーパーにて Foovo(佐藤)撮影 2024年7月下旬
シンガポールは、細胞性食品や発酵由来タンパク質の承認で世界をリードしてきた。一方で昨年には、2030年までにシンガポールの栄養需要の30%を国内生産でまかなうという従来の目標から、2035年までに国内消費のうち、食物繊維20%、タンパク質30%を国内生産で供給するという、より対象を絞った目標に移行した。
新たなタンパク質目標は卵と水産物を対象としており、代替タンパク質については、高い生産コストと消費者受容の伸び悩みによりスケールに課題があると説明している。
それでも、先月にはアジアで初めて細胞性ウズラを用いたペットフードが発売された。細胞性食品、マイコプロテイン、精密発酵の承認事例が蓄積されている点で、シンガポールは依然としてアジアだけでなく世界のフードテックにおける重要市場だといえる。
※本記事は、SFAの公開リストをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Nature’s Fynd





















































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