出典:南洋理工大学
シンガポールの南洋理工大学は9月21日、一正蒲鉾と共同で、おからをヒラタケの菌糸体で発酵させ、タンパク質が豊富で風味に優れた食品素材へ変換できる技術を実証したと発表した。
研究はラボスケールで行われ、成果は科学誌「Food Chemistry: X」に掲載された。
発酵でタンパク質やうま味成分が増加
豆腐や豆乳の製造時に発生するおからは栄養を豊富に含む一方、水分が多く傷みやすい。不溶性食物繊維の含有量も多いため、食感が粗く酸味があり、食品への利用が限られていた。
研究チームは、湿った固体上で微生物を増殖させる固体発酵を採用した。
生おからや乾燥おから、おからに小麦ふすま・おがくずを混ぜたものなど、複数の材料でヒラタケ菌糸体を成長させたところ、生おから(下記画像でFO)で菌糸体が密に成長し、11日を超える培養で材料全体を覆った。次いで小麦ふすまのみの培地(下記画像でOW0)で成長速度が速く、密な成長が確認された。

FO(生おから)、OW0(おから0%、小麦ふすま100%の培地)の順に成長速度が速かった/出典:Taste characterization of okara and okara-derived substrates fermented by Pleurotus ostreatus mycelium
また、菌類が持つ酵素によっておからの複雑な植物繊維が分解され、糖やアミノ酸などが増加した。
分析では、発酵後のタンパク質含量は乾燥重量ベースで27.7~30.2%に増加した。菌類が複雑な炭水化物を、より単純な糖に変換したことで、グルコース濃度は発酵前と比べ2.8~6.4倍に増加したほか、遊離アミノ酸も2.2~6.6倍に増加した。
うま味に関わるグルタミン酸とアスパラギン酸は最大4.1倍、アミノ酸と相乗的にうま味を強める5′-ヌクレオチドも3.2~6.3倍に増えた。風味に関わるコハク酸は一部の条件で最大14.9倍に増加した。
電子舌を使った評価では、発酵によって酸味が低下したことも確認された。一方、一部のサンプルでは苦味や乾燥感も増しており、研究チームは風味のバランスを整えるため、発酵条件をさらに最適化する必要があるとしている。
国内で年間約70万トン発生するおからを高付加価値化
今回の成果は概念実証の段階であり、研究チームは今後、食品安全性や保存安定性、香りプロファイル、人による官能評価、エネルギー消費などを検証する。また、発酵条件を最適化し、スケールアップに向けて経済性も検証する。
論文の筆頭著者であるMalsha Samarasiri博士は、商用化には安全性基準をクリアする必要があるとした上で、「うま味をもたらすMSG(グルタミン酸ナトリウム)などの食品原料になる可能性があります」と述べている。
日本乾燥おから協会によると、国内では現在、年間約70万トンのおからが発生していると推定されている。同協会は2026年4月、約35年ぶりとなる全国規模の活用実態調査を開始しており、未利用の実態を含めた最新の活用状況の把握を進めている。
参考に、2011年に日本豆腐協会がまとめた資料では、年間約66万トンのうち65%が飼料、25%が肥料として利用される一方、5~9%が産業廃棄物となり、食品への利用は1%以下とされていた。
おからのアップサイクルでは、シンガポールのMycosortiaが代替カカオ素材を開発したり、Mottainai Food Techがおからの固体発酵により植物性代替肉「Jiro Meat」を開発するなど、一部でアップサイクルの事例が確認されている。
今回の研究報告は、飼料や肥料としての利用が中心で、一部が廃棄されてきたおからを、より付加価値のある食品素材としてアップサイクルできる可能性を示している。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:南洋理工大学















































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